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    2011年第3回定例会 一般質問

    特別養護老人ホームの増設と介護職員の処遇改善について一般質問いたします。
    私は地域を回ると、「特別養護老人ホームに入所できず病院を3カ月ごとに変わっている、何とかならないか」、「妻を在宅で介護している、もう疲れた」などなど、同様の訴えをたくさん伺います。新宿区の特別養護老人ホームの待機者は5月現在1,264人であり、増設は待ったなしです。先日、私たち日本共産党区議団は、町会連合会の皆さんと懇談しましたが、その中でも、「特別養護老人ホームの待機者が1,300人いる、早く建設を進めてほしい」と要望をいただきました。
    しかし、来年度からの新宿区第5期介護保険事業計画素案を策定する高齢者保健福祉推進協議会の9月6日の資料によれば、待機者の中で即入居が必要な人は1割などと国の調査を示し、特別養護老人ホームの整備については平成23年度に実施する待機者実態調査に基づき方向性を検討としています。第4期介護保険事業計画では、在宅生活が困難な方のために、公有地の活用などにより整備を検討するとしていることと比べても切迫感が全く感じられません。直ちに特別養護老人ホーム整備の具体化を進め、第5期計画及び第二次実行計画に特別養護老人ホームの整備を盛り込み、市谷薬王寺町の公務員宿舎跡地など、引き続き区内の国公有地等を活用して特別養護老人ホーム建設を積極的に進めることを改めて要求いたしますが、いかがですか。
    第4期計画では、昨年5月に東戸山中学校跡地にマザアス新宿、ことし2月には牛込消防署跡地に特別養護老人ホーム神楽坂が開設し、入所を待っていた方からはやっと入ることができたと喜びの声が上がりました。
    しかし一方で、マザアスは職員の入れかわりが激しく、一時新卒者が8割を占めました。そのため経験者と新卒職員の間で不協和音が起こり、そうした中で職員2名が経営側から一方的に契約内容の不利益変更、降格、配転命令を下されるという事態が起こりました。幸い、職員2名は個人加盟の労働組合に加入し、団体交渉の末、配転命令を撤回させたそうです。また、別の区内特別養護老人ホームでも職員の入れかわりが多く、引き継ぎがきちんとされず入居者家族から不安の声があったと伺いました。残った職員が新人のフォローに当たるためシフトどおりにはいかず、一部の職員は残業や労働強化が常態化しているそうです。
    区はこうした実態を把握されていますか。待望の特別養護老人ホームができても、このような職員の労働環境では入居者の皆さんは安心して暮らすことができません。労働行政も介護施設の監督官庁も東京都だからということではなく、区民が安心して介護サービスを受けられるよう実態を把握し、介護施設の労働環境改善や労働法に抵触する疑いがあれば是正することを、新宿区としても積極的に行う必要があると思いますがいかがでしょうか。
    具体的には、区内の介護施設の中でも、とりわけ区が補助金を交付し監査の対象となるいわゆる財政援助団体に対し、職員の労働環境チェックも含めた事業評価を行うべきと考えますがいかがでしょうか。
    また、新宿区が今後介護施設を公募する際の応募要件や建設事業助成や運営助成の交付要件に、労働環境についての基準を設け、それをクリアする項目を加えてはいかがでしょうか。
    今回の介護保険法改定では、事業者に対する労働法規の遵守の徹底が盛り込まれています。そのための具体的な施策は今後、政省令で示されることになりますが、労働基準監督署による労働法令違反是正のための立ち入り調査など指導を強化することと、新宿区が現在、指定管理施設に行っている労働環境モニタリング調査のような実効性のある施策を行うよう国に求めてはいかがですか。
    さて、事業所を指導するだけでは介護職員の労働環境改善、人材確保にはつながりません。なぜなら、そもそも事業所に入る介護報酬額が低いため、人件費を十分に捻出できないからです。2009年の介護保険改定に当たっては、介護報酬の3%引き上げと2011年度までの時限措置として月1万5,000円分の介護職員処遇改善交付金が創設され一定の改善が行われましたが、実態はどうでしょうか。
    厚生労働省所管の財団法人介護労働安全センターが実施した2010年度の介護労働実態調査によると、介護職員の離職率が前年度比0.8%増の17.9%となり、2008年度から続いた改善傾向がとまったことが明らかになりました。また、職員の平均月収は21万6,494円で前年度から約4,000円アップしているものの、全産業平均で見ると、大幅に低い状況は変わりません。働く上での悩み、不安、不満等についての質問で最も多い回答は、「仕事の割に賃金が低い」が46.6%です。
    21世紀・老人福祉の向上をめざす施設連絡会が昨年8月に行った全国老人ホーム施設長アンケートによると、回答数1,638人の施設長のうち、介護報酬3%で十分な給与改善ができたと答えた施設長はわずか2%です。また交付金については、暫定ではなく安定的に支給すること、介護職員だけではなく施設で働くすべての職種を対象にすることなど、多くの施設長が継続、拡充を望んでいます。2009年の報酬改定と処遇改善交付金によって、区内介護施設でどの程度改善につながったのか、区の評価をお聞かせください。
    そもそも介護職員の処遇改善は民主党のマニフェストの目玉の一つであり、具体的に介護労働者の賃金を月額4万円引き上げると明記していました。これに照らせば、民主党政権は国費を拡充してさらなる賃上げを図るのが当然ではないでしょうか。
    しかし、国は処遇改善交付金を予定どおり廃止し、この分を介護報酬に盛り込む方針です。これでは保険料の値上げにつながってしまいます。
    港区は第5期介護保険計画策定に先立ち、国に対し提言書を提出しました。その中で、処遇改善交付金の維持など、介護報酬とは別建てで保険料の増額は抑えるべきと指摘しています。特別区長会が来年度の施策及び予算に関する要望として同様の要望を掲げていることは承知していますが、新宿区も独自に国に対して言うべきことを言っていく姿勢を持つべきです。
    介護職員処遇改善交付金は廃止せず、臨時特例交付金ではなく恒久的な交付金として継続し、交付額を引き上げ、対象は介護職員だけではなく、介護施設で働くすべての職種に広げることを新宿区として国に強く働きかけるべきではないでしょうか。
    地方自治体でも独自の介護人材確保や処遇改善対策を行っています。千代田区はパート職員の時給単価上乗せや非正規職員の正社員化に要する費用、都心区の物価等を考慮した住宅手当の上乗せ費用への補助を行っています。また鳥取県は、介護サービス向上のための職員加配事業として、開設初期の繁忙期対応、夜間・土日・早朝延長対応などの配置基準を上回る加配職員を派遣する事業を行っています。新宿区も人材確保・育成事業として研修事業と介護福祉士資格取得費用助成を実施していますが、こうした他自治体の例も参考に、より実効性のある人材確保、職員の処遇改善のための施策を拡充すべきと考えますが、いかがでしょうか。
    以上、答弁を求めます。

    ◎福祉部長(小栁俊彦) あざみ議員の御質問にお答えします。
    特別養護老人ホームの増設と介護職員の処遇改善についてのお尋ねです。
    初めに、特別養護老人ホームの整備を次期計画に具体的に盛り込むことについてです。
    区は、特別養護老人ホームを在宅での介護が困難になった高齢者のセーフティネットとして整備を進め、昨年度は公有地を活用した新たな施設を2カ所開設しました。特別養護老人ホームが果たす役割は今後も引き続き重要であると認識しており、次期計画においても公有地の活用による整備の可能性を検討していきます。
    次に、特別養護老人ホームの労働環境の改善についてのお尋ねです。
    マザアス新宿の従事者から労働環境等をめぐる不満が出されていたことは把握しています。
    区の調査では、労働関係法令に抵触するような事実はありませんでしたが、その後、運営法人の代表者から施設の責任者の交代を初めとする運営体制改善の報告を受けており、現在は地域に親しまれる施設として適正に運営されているものと理解しております。その他の施設についても、利用者や従事者から苦情や相談があった場合、区は東京都と連携して速やかに調査を行い、法令違反や不適切な事実を把握した場合は、その都度改善や是正の指導をしていきます。
    次に、労働関係法令に抵触する際の是正措置についてです。区は現在、計画的にサービス事業者の実地指導に入っていますが、その際には勤務シフト表や常勤、非常勤の配置などの労働環境に関する点検も必ず行っています。介護保険法の改正により来年度からは介護サービス事業者が労働法規に違反した場合は、指定を拒否できることになります。こうしたことを踏まえ、区内事業者へは実地指導や集団指導、事業者向け研修など、さまざまな機会をとらえて労働法規の遵守の徹底を指導していきます。
    次に、財政援助団体に対する労働環境のチェックです。
    指定管理者制度においては、区の責任において労働環境モニタリングを実施しています。しかし、財政援助団体であっても民設・民営による事業については労働関係法規の遵守も含め、事業者自身で取り組むべき問題で区の関与は慎重さが求められます。このため現時点においては、実地指導等の機会をとらえての労働環境のチェックで対応します。
    次に、区が建設費を助成する施設の事業者の公募条件についてです。応募の要件に労働法規の遵守について判断できる項目を設け、それを一つの判断基準にすることも検討していきます。
    次に、今回の法改正に伴い実効性のある施策を国に求めることについてですが、今後法改正による指定拒否事例や事業者自身による法令遵守の取り組みなど、法改正による影響を十分に見極め、判断してまいります。
    次に、介護報酬改定3%引き上げと処遇改善交付金についてのお尋ねです。
    最初に、区内介護施設でどの程度改善につながったのかの評価についてです。
    国の事業所調査によると、介護報酬の改定で施設職員は月額8,930円の増額、介護職員処遇改善交付金については、月額平均1万5,000円の賃金引き上げの効果があったとされています。区内の介護保険施設はすべて介護職員処遇改善交付金を申請しており、昨年に実施した新宿区高齢者の保健と福祉に関する調査によると、回答のあった8施設のうち意識的に処遇改善を図った施設が7カ所、処遇改善の結果、離職率が下がったとする施設が5カ所でした。このことから、交付金については一定の処遇改善につながったものと評価しています。
    次に、介護職員処遇改善交付金についてです。
    処遇改善交付金の交付時期は平成23年度までとされており、恒久的なものでないため、介護事業者、介護従事者は不安定な状態に置かれています。介護保険財源として恒久的な財源が確保されるまで、引き続き介護職員処遇改善交付金が継続されるよう、区は昨年度から全国市長会や特別区長会を通じた要望を行ってきました。港区が独自に提言書を提出したことは承知していますが、同内容の提言は、本年1月、特別区介護保険課長会の緊急提言書として国に提出しています。当時幹事区だった新宿区がその提言書を持参した際には、面談した国の担当官に交付金の継続はもちろん、都心区特有の課題を踏まえたさまざまな要望を伝えています。
    次に、人材確保、職員の処遇改善のための施策についてです。
    処遇改善のために区が介護職員にのみ給与の一部相当分を補助すること等は慎重であるべきと考えますが、介護人材の確保・育成策として区独自の研修事業である新宿ケアカレッジや介護福祉士資格取得費用助成ほか、介護サービス事業者協議会への支援なども継続しながら、区内の介護人材の確保・育成を図ってまいります。
    以上で答弁を終わります。

    (あざみ民栄) 御答弁ありがとうございました。
    特別養護老人ホームの増設については、公有地の活用を引き続き行っていくということですけれども、ここでちょっと例を出しました市谷薬王寺の公務員宿舎ですけれども、ことしじゅうには売却方針が正式に決定をして、年明けには地元自治体さんが手を挙げられるような状況になるということを関東財務局のほうには伺いましたので、ぜひそこは積極的に進めていただきたいなというふうに思います。
    いろいろ積極的というか、前向きな答弁、これはちょっとという答弁、いろいろありましたけれども、この後、決算特別委員会が設置をされますので、私は残念ながら入りませんけれども、同僚議員にこの後のことを託していきたいと思います。
    以上で、私の一般質問を終わらせていただきます。
    ありがとうございました。

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    2011.09.16 更新

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