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    2013年第1回定例会 一般質問

     体罰の根絶と大津市のいじめに関する第三者調査委員会の調査報告書における提言について

     

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    (質問)
    日本共産党区議団の沢田あゆみです。私は、体罰の根絶と大津市のいじめに関する第三者調査委員会の調査報告書における提言について、一般質問いたします。

     
    私は、昨年の第3回定例会で大津市のいじめ自殺事件に触れ、いじめ防止対策について質問しました。いじめをなくそうという取り組みが全国的に行われている さなかに、昨年末、またも学校現場で子どもの命が失われる事態が起きました。大阪市立桜宮高校で、部活動での体罰を苦に男子生徒が自ら命を絶ちました。私 も同世代の子どもを持つ親として身につまされるものがあり、心から哀悼の意を表するとともに、二度とこのようなことが起こらないよう、体罰を根絶しなけれ ばと強く思いました。

     
    この事件をめぐる大阪市の橋下市長と教育委員会の対応は、とても教育的とは言いいがたく、衆議院の文部科学委員会でも閉会 中審査が行われるなど、体罰が社会問題となっている中、柔道女子日本代表監督の体罰・パワハラ問題発覚で、教育界、スポーツ界全体に指導のあり方が問われ る事態となっています。体罰はそもそも昭和22年から学校教育法で禁止されており、アメリカで行われた調査では、体罰は長期的には、攻撃性が強くなる、反 社会的行動に走る、精神疾患を発症するなどのリスクが高まることが判明しており、奈良教育大学を中心とする「学校運動部活動における体罰に関する調査研 究」で体罰経験が体罰の再生産となる可能性があることを指摘したように、体罰は決して肯定されてはならないものです。ところが、橋下市長や義家文部科学政 務官の発言に見られるように体罰容認論がまだまだ政治家の中にも学校現場にもあるのではないでしょうか。区教育委員会は体罰についてどのような認識で、根 絶のためにどのような取り組みをしてきたのか、まず最初にお聞きします。

     
    体罰の問題では現在、文部科学省と東京都教育委員会が体罰に関する調査 を行っていますが、今年度の部活動に限った調査となっており不充分と言わざるを得ません。区教育委員会として独自の調査も行っているようですが、子どもに 対してのアンケートでは「自らが体罰を受けたかどうか」だけでなく「友だちが体罰を受けているのを見聞きしたか」ということを小学生であっても高学年には 聞くなどしなければ充分な実態把握はできないと思います。また、保護者アンケートも行うべきです。私自身も体罰に関する悩みや相談を保護者から受けたこと がありますが、多くの場合、子どもも保護者も傷つき悩んだ末、「学校にも教育委員会にも言えない」「言ってもムダだと思った」というものでした。区立小中 学校の体罰に係る処分・措置が行われたのはこの5年間で2件のみでしたが、それ以外にも区教委には体罰の相談や情報提供が寄せられていると思います。それ は年間何件位あり、処分や措置が行われなかったケースについてはどのような対応がされたでしょうか。その結果、再発はなかったかどうかについても伺いま す。そして今回の調査で、区教委としてはどのように実態を把握しようと考えているのか、調査結果をいつどのように公表し、体罰があった場合、どのように対 応するつもりなのかお答えください。

     
    大事なのは、体罰は絶対にあってはならないという認識の徹底と、それでも起こってしまった体罰には、早急に 実態を把握し二度と起こさない再発防止の取り組みです。今回の事を契機に、なかなか表面化しにくい体罰の問題を、ふれあい月間等で行う子どもへのアンケー ト項目の見直しや保護者アンケートも含めた実態把握を引き続き行うこと、早急な対応で再発防止を徹底することが必要ではないでしょうか。お答えください。

     
    大津市は、昨年の事件を受けて「大津市立中学校におけるいじめに関する第3者調査委員会」を設置し、今年1月に調査報告書をまとめ、そのうち第3部の提言 が「日本の全ての学校に、このような事象が起こらないための予防的方策として」「一つでも教育現場等で実践されることを期待」し公表されました。この提言 は、「教員への提言」「学校への提言」「教育委員会への提言」「スクールカウンセラーへの提言」「危機対応」「将来に向けての課題」の6項目に渡っていま す。私はこれを読んで思いました。いじめ問題で書かれた提言ではありますが、体罰にも触れており、教員、学校がどうあるべきか、教育委員会がどうあるべき か、提言の指摘をそれぞれの立場で振り返って考える必要があるのではないでしょうか。また、教員の多忙さなど、全国共通の悩みや課題についても言及してい ます。第3者委員会の提言は新宿区の教育委員会においても参考にすべき点が多々あると感じました。新宿区の教育委員と事務局のみんさんは、この提言をお読 みになられたでしょうか。そのなかで新宿区でも参考にしようと思う点があれば6項目のそれぞれについて具体的にお答えください。

     
    大津市のいじめ 自殺に関する第3者委員会の調査報告書の中でも、子ども同士の関係で起きるいじめのみならず体罰も、子どもの権利条約に基づいた第3者機関による相談窓口 を設置すべきことは国連子どもの委員会が日本政府に求めており、「学校からの独立性とともに調査に関する権限が付与される必要がある」として、スクールロ イヤー=弁護士による定期サポートや、オンブズマンなど第三者機関の創設をあげています。

     
    現在、新宿区の相談体制の中で「新宿子どもほっとライ ン」がありますが、これは当初いじめ問題で子ども自身が相談できる学校以外の窓口として設置されたもので、保護者からの相談は基本的に教育センターが窓口 です。「新宿子どもほっとライン」は外部委託の臨床心理士が子どもの心のケアを行いますが、臨床心理士=カウンセラーの役割は大津市の提言でも指摘してい るように相談内容や個人情報を学校などに安易に提供することは禁止されており、そもそも役割が違います。まして学校同様、教育委員会の下にある教育セン ターでは独立性は担保されません。

     
    私は、2008年の予算特別委員会において子どもの権利条例制定とその具体化としての子どもの権利擁護委員制 度について目黒区の事例も示しながら提案しました。あれから5年、今日の事態はその必要性を増しています。目黒区では「目黒区子ども条例」に基づく「めぐ ろ はあと ねっと」という子どもの悩み相談室を2008年1月から設置し、弁護士と臨床心理士の2名を相談員として、子どもや保護者などから、いじめや 体罰・虐待など、子どもの人権に関わる相談を受けています。相談実績は、2010年度231件、2011年度140件となっています。また、豊島区も「豊 島区子どもの権利に関する条例」に基づく子どもの権利擁護委員として弁護士と臨床心理士の2名を配置し、2012年度からはアウトリーチで子どもが放課後 を過ごす場所に出向き、直接相談を受ける活動を始めています。豊島区の昨年度の実績は、児童虐待受理会議出席23回、保護者面接16回、子ども面接76 回、電話やメールによる相談が351回となっています。豊島区の子どもの権利擁護委員は当面、区長の付属機関として設置されていますが、学校への調査など 機敏な対応を可能とするためには、第3者機関とし、事務局体制も整備することが課題となっていると聞きました。新宿区も5年前と違うのは、新宿区自治基本 条例にが制定され、子どもの権利が明確にされたことです。新宿区においても子どもの権利条例を制定し、子どもの権利擁護委員を設置すべきと考えますがいか がでしょうか。答弁願います。

     

     

     
    (答弁)
    沢田議員のご質問にお答えいたします。

     
    体罰の根絶と大津市のいじめに関する第 三者調査委員会の調査報告書における提言についてのお尋ねです。はじめに、教育委員会として、体罰の認識と根絶のための取組みについてのお尋ねです。体罰 は、学校教育法で明確に禁止されており、子どもの心を深く傷つける人権侵害の行為であり、教員が決して行ってはならないものと認識しています。教育委員会 では、校長会、副校長会の機会を活用し、毎学期、体罰の禁止について指導するとともに、初任者研修、転入教員研修、10年経験者研修の中においても、必ず 体罰について取り上げ、体罰の禁止の徹底を図っています。また、学校は、管理職による日常的な指導だけでなく、7月と12月の年間2回の服務事故防止研修 の中で体罰の禁止について取り上げ、日常の指導の在り方について見直すとともに、体罰の禁止の徹底を図っています。

     
    次に、体罰の実態と対応につ いてのお尋ねです。体罰の相談や情報提供の年間の件数については、今年度、1月末まで体罰と認められるものはありませんが、教員の言葉の使い方など指導が 不適切であるとの情報は、保護者や学校から計7件ありました。区教育委員会では、寄せられた情報1件1件について調査を行い、処分・措置が行われなかった ケースも含め、指導が不適切と確認されたものについては、直接教員と校長に対し厳しく指導しています。その結果、当該教員の子どもへの対応は、確実に改善 されています。

     
    次に、今回の調査についてのお尋ねです。体罰については、報道機関の世論調査によれば、体罰を「一切認めるべきでない」との回答 が5割を超える一方で、「一定の範囲で認めてもよい」との回答が約4割を占めるなど、これまで社会全体にも一部体罰を容認する風潮があったことは否めませ ん。区教育委員会としては、今回の大阪市の事件を契機に、改めて学校も含めた社会全体で、体罰は法律で禁止された人権侵害の行為であることの意味を徹底す ることの重要性を認識したところです。今回、区の実施する調査については、区内の学校が教員の指導について実態把握をするとともに、適切な指導の徹底と体 罰禁止の意識啓発を図ることを目的に実施しています。調査の結果、体罰があった場合の対応については、区教育委員会として調査し、問題点について当該教員 および校長を厳しく指導するとともに、東京都教育委員会に報告します。その後、東京都教育委員会が改めて調査した上で、処分・措置が決定されることになり ます。また、調査結果については、調査の概要がまとまり次第、教育委員会、文教委員会に報告するとともに、東京都教育委員会の処分・措置が決定した場合は 改めて報告します。

     
    次に、体罰の再発防止についてのお尋ねです。体罰の防止に向けては、教員の指導の点検と、子ども・保護者が相談できる体制の 整備が重要です。教員の指導の点検として、体罰にかかわる設問をふれあい月間の調査項目に追加し実施するとともに、保護者に周知し継続的な実態把握の取組 みとして実施することを、すでに校長会とも検討しています。また、教育委員会では、子どもが相談できる機関として、新宿子どもほっとライン等の紹介を2月 25日付の教育広報に掲載しました。さらに、保護者の相談先として、教育相談室や教育指導課の連絡先を区のホームページに2月13日から掲載しています。 今後は、継続的な教員の指導の点検と、子ども・保護者が相談できる体制の整備を進めることで、体罰の防止に努めてまいります。

     
    次に、大津市のい じめに関する第三者調査委員会の調査報告書における提言についてのお尋ねです。教育委員会事務局としても、この報告書については、教育施策の参考資料とし て拝見しました。報告書で提言された項目について参考にしようと思う点についてのお尋ねです。まず「教員への提言」に関わるものとしては、本区において も、教員自身の感性を磨くことは重要なことと認識しています。今後も各種研修会においては、実践的な研修内容となるよう工夫していきたいと考えています。 次に「学校への提言」に関わるものとしては、教育相談月間やスクールカウンセラーを活用した教育相談の充実など、子どもがいじめに限らず悩み事を相談でき る体制の構築を進めていくことの必要性を改めて認識しました。次に「教育委員会への提言」に関わるものとしては、学校への指導・助言と支援の在り方につい て、適切な内容と効果という視点で進めていますが、教員の研修については児童・生徒理解やいじめ等への教育課題に対し、具体的なスキルが身に付くような実 践的な内容となるよう取組んでまいります。次に「スクールカウンセラーへの提言」に関わるものとしては、さまざまな課題や複雑な家庭環境を抱える子どもた ちに対応するために、今年度から2名の「スクールソーシャルワーカー」を配置していますが、この1年の活用を検証するとともに、学校のニーズをとらえ、一 層の充実を図っていきます。次に「危機対応」に関わるものとしては、平時と緊急時の対応の在り方について、教育委員会としての対応も含め検証していくこと の重要性を改めて認識しました。最後に「将来に向けての課題」に関わる内容としては、児童・生徒のシグナル及び保護者からの相談を受け止める各機関がきめ 細かく連携することの重要性を認識しました。

     
    次に、子どもの権利条例の制定と子どもの権利擁護委員の設置についてのお尋ねです。子どもの権利に ついては、新宿区自治基本条例の中に明確に規定しています。また、次世代育成支援計画においても、「子どもの権利条約」で定められた「生きる権利」「育つ 権利」などを大切に捉え、子どもの幸せを第一に考えることを基本に、さまざまな子育て支援施策を推進してきました。子どもを取り巻く環境が厳しさを増す 中、多岐に渡る子どもの悩みに対し、それぞれの地域の児童館や子ども家庭支援センターが、子どもたちの声を直接受け止められるようにしています。さらに、 拠点となる子ども総合センターには臨床発達心理士も配置しており、いじめに悩む子どもとその家庭の支援にもあたらせています。区では、こうした子ども総合 センターや教育センターを軸に、子どもたちをきめ細やかに支援していけるように、「新宿区子ども家庭・若者サポートネットワーク」を設置しています。区の 関係部署のみならず、東京都児童相談センター、区内4警察署、子ども人権委員、民生児童委員等にも構成員となっていただいています。このように多くの関係 者が、ネットワークの中で相互に情報を共有し、必要に応じて個別のケースについても協議し、具体的な対応を行い、十分に子どもの権利を守るための役割を果 たしていると認識していますので、権利擁護委員の設置は現状では考えておりません。今後も子どもの権利を守るための取組みを強化しつつ、子どもの立場に たった対応を丁寧に行いながら、実質的に子どもの権利を擁護してまいります。

     


    区議会活動 | 沢田あゆみ

    2013.02.25 更新

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