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    2014年第4回定例会 一般質問

    阿部写真

    社会福祉法人立の民設民営保育園について

     

    【質問】

    日本共産党区議団の阿部早苗です。

    私は、社会福祉法人立の民設民営保育園について、区長に一般質問します。

    文教子ども家庭委員会には、第3回定例会で新宿こだま保育園に関する陳情が提出され、継続審査となっています。 同保育園は、区立中落合第1保育園跡地に、埼玉県の社会福祉法人呉竹会が2011年4月に開設しました。 陳情によれば、同保育園では、8名のベテラン保育士が相次いで退職しており、退職の原因が園長を含む法人経営陣からの度重なるパワーハラスメントにあると説明されています。 厚生労働省作成の「職場のパワーハラスメント対策ハンドブック」によれば、パワーハラスメントとは、「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」と定義され、問題を放置すれば、人は仕事への意欲や自信を失い、時には、心身の健康や命すら危険にさらされる場合があるとも指摘しています。開設から3年程度の間に8名のベテラン保育士が相次いで退職する事態は正常といえず、それは保育サービスの質に影響してきます。パワハラ行為があったという申し出について、区として調査し事実確認はしたのでしょうか。したのであれば結果をお聞かせ下さい。 また、新宿区は、私立保育園に対して運営費を支弁していますが、陳情で指摘されているような法人経営陣によるパワハラが事実だとすれば、そのような団体に公費を支弁することの是非について区長の見解をお聞かせ下さい。

     

    陳情とそれに添付された資料によれば、労働条件の一方的な不利益変更があり、労働契約法違反の疑いがあるとも指摘されています。 労働契約法では、労使の合意によって労働条件を変更することはできますが、原則として労働者の不利益になるような変更はできません。 新宿区が公費を支弁し、区民の大切なお子さんを保育する職場で、労働法規違反は許されません。 この問題については、使用者だけでなく労働者側からも聞き取りをして事実確認をすべきです。区として双方に対して調査したのか、したのであれば、調査結果をお示し下さい。

     

    新宿区は、委託契約や指定管理契約は、調達のあり方指針に基づいて労働環境モニタリングを行い、複数の社会保険労務士がチェックしています。昨年度のモニタリング実施結果を見ると、就業規則に関しては、「パートタイマーが過半数代表の選出に参画していなかった」、「雇用契約書の交付が確認できない者がいた」等が指摘されています。 残念ながら私立保育園のように運営費を支弁している関係は、モニタリングの対象になっていません。子育てや介護など、労働環境が利用者のサービスの質に直結する事業者については、労働環境モニタリングの対象にすることを検討すべきと考えます。少なくとも、事業者選定の際に、労働環境について厳しくチェックすることが必要と考えますが、いかがですか。

     

    わが会派は、社会福祉法人の指導・監督について本年6月の第2回定例会で質問しました。現行の都の権限は児童福祉法に基づく児童相談所設置市の事務と位置づけられていて、児童相談所が移管されれば都から区に権限委譲されると答弁されています。しかし複数の都道府県にまたがって施設等を経営する社会福祉法人は、法人本部所在地を管轄する地方厚生局長となっており、呉竹会は関東信越厚生局が所管しています。他県に本部を置く法人が運営する私立保育園は呉竹会だけではありませんし、介護施設も同様に増加しています。 労働条件等は個々の事業所単位で労働基準監督署の管轄が決められています。社会福祉法人も事業所単位で指導・監督する方が、日常的に目が行き届き、対策も機動的にできるのではないでしょうか。区長の見解をお聞かせ下さい。

     

    そして、新宿こだま保育園は生活保護世帯の児童の園長保育料を徴収し、保護者から指摘されても「免除に対応していない」などと言って返還に応じようとせず、保護者が保育園子ども園課に数回にわたって問い合わせ確認して後、ようやく過去に遡及して返還をしたと指摘しています。新宿区保育所保育料徴収条例では、生活保護世帯と住民税非課税世帯の延長保育料は0円であり、私立認可保育園も同様の扱いと考えます。担当課が指導してもすぐには返還に応じなかったとのことですが、この間の経緯について区側の説明を求めます。保育料免除については区との協定書に明確に記載されており、疑問の余地はありません。協定書はすこぶる簡略なもので、責任ある立場の者が内容を理解していないなどということは考えられません。これ自体区との間の信義則に反すると考えますが、区長の認識をうかがいます。 11月の文教子ども家庭委員会では、他に同様の事例がないか調査が必要と指摘されていますので、新宿こだま保育園で同様のケースがないか、他の私立認可保育園ではどうか調査されたと思います。その結果について報告を求めます。また、延長保育料に限らず、区との協定が遵守されているかどうか定期的にチェックするすることをシステム化することも必要と考えますが、いかがですか。

     

    来年度の区立園を対象とする「延長保育のご案内」を区のホームページ見ましたが、料金欄には時間ごとの料金しか書かれておらず、免除については記載がありません。 条例に基づいて免除についてもきちんと記載すべきではないでしょうか。お答え下さい。

     

    他県から法人が参入するケースは、保育園だけでなく特別養護老人ホーム等の介護施設でもありますし、今後も増加すると考えられます。 区内の保育所や特養等の介護施設でしょっちゅう職員が入れ替わるという話は、利用者の家族からよく聞きます。福祉労働者の低賃金が最大の原因であり、改善が必要なことはいろいろなところで指摘されていますが、今回のケースは法令違反や協定違反が指摘されている事例であり、所管庁のチェックと指導が必要です。区は、厚生労働省関東信越厚生局への情報提供等はされたのでしょうか。

     

    保育園子ども園課が、区立保育園園長経験者らによる抜き打ち指導をし、できるだけ質を確保して子どもに影響が及ばないように努力していることは評価しますが、保護者の理解はまだ充分とはいえず、追加の陳情資料が議会に出されています。新宿こだま保育園における区の対応は、今後民営化をすすめるうえで区民・利用者の理解を得る試金石となります。新宿区は、「保護者が選択できる多様な保育環境整備」という名目で、建物が老朽化した区立保育園の跡地に社会福祉法人に建物を建設させる等して、区立保育園を廃止して民設民営の私立保育園への移行を促進してきました。今後も、新宿第2と大久保第2の2つの区立保育園を廃止して私立こども園に移行する計画です。陳情で指摘されていることが事実で、迅速な対処ができずにいつまでたっても保護者の理解と納得が得られないようなら、今後の民営化はやめるべきと考えますが、区長のご所見をうかがいます。

     

    【答弁】

    阿部議員のご質問にお答えします。

    初めに、新宿こだま保育園におけるパワーハラスメント行為や労働条件の一方的な不利益変更についての事実確認とその調査結果、運営費の支弁の是非についてのお尋ねです。 区は、新宿こだま保育園の保護者から提出された陳情を重く受け止め、保育園を運営する社会福祉法人の理事長と園長から事情を聞きました。その結果園長による職員指導の範囲内での行為であり、職員へのパワーハラスメントではないとの回答を得ています。また、法人が契約する弁護士の助言のもと適切に就業規則等の変更を行っているとの回答も得られました。このため、区ではご指摘の事実はなかったと認識しており、運営費の支出は適切と考えています。なお、退職した保育士等から聞き取りを行う予定はありませんが、パワーハラスメント行為や労働条件の一方的な不利益変更等の問題については、東京労働局の労働紛争解決制度についての情報提供等を行ってまいります。

     

    次に、労働環境が利用者のサービスの質に直結する事業者については、労働環境モニタリングの対象とすべきであるとのお尋ねです。労働環境モニタリングは、社会保険労務士が細部にわたる検証を行うなど、労働環境を知る上で非常に有効な手段と認識していますが、雇用者としての事業実施法人の認識が非常に重要であるため、事業者みずからの責任において実施するよう、働きかけてまいります。 次に、事業者選定の際に、労働環境についてチェックすることが必要とのお尋ねです。区では、保育園、子ども園等の事業者選定の際に、法人の保育・教育内容や運営方針とともに、職員の給与や勤務条件を明記した提案書を提出させ、労働環境についても確認しています。

     

    次に、社会福祉法人も事業所単位で指導・監督すべきとのお尋ねです。都道府県にまたがる社会福祉法人への指導、監督は、法人本部所在地を管轄する地方厚生局長が所管しています。こうした仕組みは、広域的な対応が必要であることから妥当であると考えています。区は保育所運営費の支弁者として、今年度から園長経験のある保育士OBを含む複数の職員が、私立認可保育園に巡回指導を行うなど、指導の強化を図っています。今後も、こうした仕組みの中で、社会福祉法人の運営についてもチェックを行ってまいります。

     

    次に、延長保育料返還の経緯や協定書についてのお尋ねです。新宿こだま保育園の保護者から保育園子ども園課に、延長保育料免除への対応について問い合わせがあり、園長に確認したところ、すぐに返金する旨の回答がありました。しかし、その後内部の手続きの遅れがあり、返金までに時間を要したと認識しています。今回のケースにより、協定書の内容が確実に履行されていなかったことについては、課題と認識しており、今後は園長会等で協定書の内容を再度説明し、履行を徹底するとともに、協定の遵守について保育園子ども園課が定期的に行っている巡回指導の際に確認をしていきます。新宿こだま保育園で同様に返金したケースは他に1件あり、そのほかに該当者がいないかどうか、現在園で調査を行っています。他の私立認可保育園については調査の結果、該当のケースはありませんでした。また、今後はホームページの「延長保育のご案内」のページに延長保育料の免除について記載し、保護者への周知を図っていきます。 次に、区からの厚生労働省関東信越厚生局への情報提供についてのお尋ねです。厚生労働省関東信越厚生局から、本年の8月と9月に、新宿こだま保育園の状況や延長保育料の減免について区に問い合わせがあり、区として把握している内容を説明するとともに、重点的に指導を行っている旨回答しました。

     

    次に、今後の保育園の民営化についてのお尋ねです。区がこれまで進めてきた、老朽化した区立保育園建替えの際の私立保育園・私立子ども園化は、待機児童の解消や多様な保育ニーズへの対応に大きな効果を発揮しています。区は、今後も保護者が安心してお子さんを預けていただける保育環境や保育内容を維持していくために、民間事業者への適切な指導を行ってまいります。

    区議会活動 | あべ早苗

    2014.12.20 更新

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