子どもたちに希望ある未来を…
日本共産党 新宿区議団 > 2016年第2回定例会 代表質問
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    2016年第2回定例会 代表質問

    6月9日の本会議で、阿部早苗議員が以下の項目について代表質問を行いました。

    1.施設白書と公共施設等総合管理計画について 
    2.待機児童対策について
    3.子どもの貧困対策について 
    4.雇用対策について
    5.地震対策について

    6.LGBTについて

     正式な会議録ではありませんが、概要をご紹介します。

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    (阿部早苗議員) 日本共産党区議団の阿部早苗です。新宿区議会2016年第2回定例会にあたり、日本共産党を代表して、区長と教育委員会に質問します。
     4月14日以降に発生した熊本地震では、地震による死者49人、エコノミー症候群等で20人の方が関連死されました。住宅は、熊本県だけで約11万棟、大分県で2400棟余という大きな被害が発生しました。亡くなられた方にお悔やみ申し上げますと共に、被災された方々に心からお見舞い申し上げます。
     今街を歩くと「舛添をやめさせろ」と毎日のように言われます。世論調査でも4人中3人は都知事を「やめるべき」と回答しています。弁護士の調査結果が出たとして記者会見した舛添氏は、知事続投を表明しました。「不適切だが、違法ではない」という矛盾した解釈が成り立つなら、政治資金規正法は国民の常識に合わせて改正すべきだし、舛添氏は都知事を辞任すべきです。都議会がどのように対応をするのかに注目が集まっていますが、日本共産党都議団は、百条委員会設置をはじめ疑惑の徹底解明を求めて奮闘しています。
     参院選突入を前に、安倍内閣は消費税10%への増税を2年半先送りすることを決めました。消費税を8%に引き上げた結果、経済の6割を占める個人消費は2年連続マイナスという異常事態に陥り、低迷から抜け出せません。大企業は史上最高の利益を上げていますが、労働者の実質賃金は5年連続マイナス、5%も目減りしました。3年半に及ぶアベノミクスの破綻も明らかです。消費税10%への増税は先送りでなくきっぱり断念すべきです。低所得層に負担が重い消費税頼みはやめて、富裕層と大企業に応分の税負担を求める方向に舵を切りかえるべきです。
     参院選では、憲法違反の安保関連法を強行し、立憲主義を踏みにじる安倍政治をストップさせるために、野党は32ある1人区全てで候補者を1本化し野党共闘で闘います。平和・民主主義・人権を守る日本社会めざし、日本共産党は全力で奮闘することを申し上げ、以下質問します。

     最初に、施設白書と公共施設等総合管理計画について質問します。
     安倍政権は、公共施設がこれから大量に更新時期を迎える一方、地方財政が厳しいこと、人口減少で公共施設の利用が減少すること、市町村合併後の施設最適化を図ることが必要だとして、2014年、地方自治体に公共施設等総合管理計画を策定するよう通知を出しました。計画策定にあたっては、施設等の現状や課題を客観的に把握・分析することが求められており、これに従って新宿区も本年3月末に、新宿区施設白書をまとめました。そのうえで、今年度は公共施設等総合管理計画を策定する方針です。
     区は、施設白書をまとめるにあたり、東洋大学PPP研究センターに随意契約で業務委託し、その事は今年3月の予算特別委員会まで議会に報告されませんでした。これからの計画策定についても同研究センターがコンサルの役割を果たし、しかも同センター長の根本祐二教授が有識者として議論に参加すると聞きました。1委託事業者がここまで区の計画に関与した前例はないと考えますが、どのような理由でこのような方法を採ったのでしょうか。ここまで同センターが関与すれば、策定される計画は根本教授がほとんどリードして出来上がるだろうことは明らかだと考えますが、区長のご所見をうかがいます。
     総務省は、計画策定にあたっての留意事項として、PPP/PFIの活用を呈示し、PPP/PFI手法導入を優先的に検討するよう地方自治体に要請しています。根本教授は東洋大学の公民連携専攻長として、同大学のホームページで、PPPは公共分野に民間の智恵や資金を投入するもの、非常に多くの分野でビジネスチャンスが発生する、公共サービスに関連するほぼ全ての業種でビジネスチャンスにつながる、とあけすけに述べています。日本の公共部門は生産性が低いから民間の智恵を導入できるといって、多くの自治体で失敗したPFIも推奨しています。公共施設の管理は必要ですが、PPPやPFI手法を特別扱いする意図や、公共施設等総合管理計画をつくる目的が、民間のビジネスチャンスをつくることにあると考えざるを得ませんが、区長もその考えに賛同し根本教授を起用されたのかお答えください。
     施設白書では、185棟ある区有施設の年間維持管理・運営経費は約180億円余であり、将来更新費用は1年度あたり67.8億円であるとし、これに対して最近5年間に支出した区有施設に係る普通建設事業費の平均額54.7億円を予算確保可能額として、将来予算不足額は1年度あたり13億円という数字を示しました。この予算確保可能額は単に過去の実績の平均値であって税収は確定したわけでもなく、都区財政調整も加味されていません。この数字をもって財源不足をことさら強調し、施設の統廃合などに誘導しようというのなら、それはアンフェアなやり方ではないでしょうか。お答えください。
     さらに白書では、区有施設のあり方の論点として7つの論点が示されました。PPP研究センターの標準モデルに基づくとの注釈付きですが、施設の複合化、類似機能の施設の集約化、跡地売却、そしてPPP導入などの論点で、この論点に沿って議論が整理され、計画が作られることになるのではありませんか。そうでないとしたら、わざわざ記載しないと思いますがいかがでしょうか。
     5月22日に行われた区主催の公共施設フオーラムで根本教授は、「新宿区の公共施設の老朽化問題は解決可能か?」をテーマにして講演し、将来の財政不足額を解決するには、「小中学校の小規模校を統廃合する」「小規模施設はすべて廃止し、機能を移転・転用する」ことなどを主張し、PFI事業の導入を説きました。7つの論点で示した方向です。そこで具体的に伺います。
    根本教授は、区立学校の統廃合をしきりに主張します。区は、学校統廃合計画については時間をかけて議論し見送った経過があります。児童数が文科省の基準より低いとの理由で統廃合をすすめると主張するのはあまりにも乱暴すぎます。過去の経過も無視して学校統廃合をすすめたり、複合施設化することはやめるべきだと考えますが、区長と教育委員会のご所見を伺います。
     総務省は、人口20万人以上の地方自治体にPPP/PFI導入の検討を義務付け、自治体に補助金まで出して誘導しようとしています。根本教授はフォーラムで参加者の質問に対して失敗事例がないかのように答えましたが、日銀の行金融機構局が3月にまとめた資料にもあるようにPFIは各地で失敗しています。PFIはなにも最近新しく出されたものではなく、私も10年以上前に、議会の特別委員会で関西方面に視察に行ったことがありますが、成功しているとは思えませんでした。区もこれまでPFIについて一定の検討をしたうえで採用してこなかったのではないかと思いますが、いかがですか。

    (吉住健一区長) 阿部議員のご質問にお答えします。
     施設白書と公共施設等総合管理計画についてのお尋ねです。
     はじめに、東洋大学PPP研究センターとの計画策定業務委託契約についてです。
     まず、施設白書の作成業務の受託事業者は、総務省が定める公共施設等総合管理計画の策定指針の趣旨を十分に熟知し、計画策定のために必要な情報の収集・分析・課題整理や公共施設マネジメントの手法の提案ができる力量を有していることが求められます。東洋大学PPP研究センターは、地方自治体における公共施設マネジメントに関する調査研究の受託実績や、公共施設等総合管理計画の標準モデルの提案、全国自治体公共施設延べ床面積データの公表、社会資本更新投資計算ソフトの開発など、豊富な実績を有していることから、施設白書の作成の委託先として選定したところです。また、施設白書の作成を通じて、新宿区の区有施設の概観を十分に熟知していることから、公共施設等総合管理計画策定業務の委託先としても選定しています。このほか、有識者会議の委員としては、施設の老朽化対策について先進的な研究実績を多数有していることから、学識経験者として東洋大学の根本教授にお願いしたものです。
     また、総務省の公共施設等総合管理計画策定指針においては、公共施設の更新などに際しては、民間の技術・ノウハウ・資金等を活用することが有効な場合もあることから、計画の検討にあたっては、PPP・PFIの活用などに留意することとなっており、区としても慎重に検討してまいります。なお、公共施設等総合管理計画の策定にあたっては、新総合計画策定のための区民討議会や区有施設利用者を対象とした区有施設のあり方に関するアンケート調査、計画素案に対するパブリック・コメントや地域説明会など一般区民や施設利用者の意見も伺いながら、区として計画を策定していきます。
     次に施設白書で示した将来更新費用と7つの論点についてです。
     施設白書の将来予算不足額は、総務省が推奨している公共施設等更新費用試算ソフトを用いて試算しました。既存の区有施設について、建築後30年目に大規模改修を実施し、建築後60年目に現在と同じ規模で建て替えると仮定して試算した将来更新費用と、最近5年間に支出した区有施設に係る建設事業費の平均金額の差で算出したものです。将来更新費用額試算は、現状の区有施設のすべてを現在の規模で維持し続けるために不足する額の概算を把握することを目的としたものです。この試算を踏まえ、施設の長寿命化や総量削減、事業手法の効率化等により将来財政負担の軽減・平準化を図ってまいります。
     また、施設白書で示した7つの論点は、公共施設等総合管理計画策定のための標準的な基準に基づいて整理した論点です。現在の区有施設について、区が施設を所有して行政サービスとして提供する必要があるかどうかなどを検証し、民間移管等のソフト化や類似機能の共有化、統廃合などの対応策を示しながら、基本的な考え方を定めていきます。
     次に、PFIの導入についてのお尋ねです。
     PFI(プライベート・ファイナンス・イニシアティブ)とは、PFI法に基づき、公共施設の建設、維持管理、運営等を民間の資金、経営能力及び技術力を活用して行う手法です。PFIを活用する場合、導入可能性調査や実施方針策定、事業者選定・契約手続に相当な期間を要します。また、PFI法による多くの手続が発生し、バリュー・フォー・マネー(総事業費削減率)の算出や事業計画策定、契約締結における専門的知識が求められ、外部コンサルタントへの委託費用が発生します。区ではこれまで、他自治体の導入状況について情報収集するとともに、PFIの導入効果や課題などについて検討してきました。今後とも、他自治体の導入状況について情報収集するとともに、公共施設等総合管理計画の策定の中で、慎重に検討してまいります。

    (酒井敏男教育長) 教育委員会へのご質問にお答えします。
     学校統廃合をすすめることはやめるべきとのお尋ねです。
     教育委員会では良好な教育環境を整備するため、平成4年7月の「新宿区立学校の適正規模、適正配置及び学校施設のあり方等について」の答申主旨を基本にしつつ、平成14年の「学校適正配置ビジョン」に基づき、これまで学校統廃合を実施してきました。
     学校統廃合に際しては、一律に基準を適用したり効率化といったことだけでなく、地元地域で形成された特色や伝統など長い歴史を踏まえ、関係する地域の皆さまや保護者の方々にご意見を丁寧にお伺いしながら実施してまいりました。今後も「文科省の基準より児童数が少ない」といったことだけで統廃合をするものではなく、過去の経過や地元の皆さまの意見を踏まえつつ、子どもたちの教育環境を第一に考えて、対応してまいります。
     次に学校の統廃合や複合化についてです。
     区立小・中学校の統廃合については、良好な教育環境整備の観点から、学校教育法に基づき学校規模の適正化や配置を行うもので、教育委員会で適切に判断していただいていると認識しています。一方、小・中学校などを含む区有施設の複合化については、効果的・効率的な行政サービスの観点から検証を行う必要があると考えますが、その際には、行政需要や地域の施設配置状況等を総合的に勘案し判断していくものと考えています。


    (阿部議員) 次に、待機児童対策について質問します。
     今年4月の待機児童数は、新定義は58名で、昨年比マイナス110名と大幅に減りましたが、旧定義は282名で、昨年比マイナス44名にとどまりました。認証保育所に預けるか育児休業を延長して認可保育園入園を待っている区民が224名もいるのですから、待機児童が減って良かったとは到底言えません。4月の待機児童数について区長はどのように分析していますか。
    4月の町目別の待機児童数を見ると、大久保出張所管内が最も多くなっています。この地域の待機児童は以前から指数が低いといわれていますが、仮にそうであったとしても待機児童ゼロするためには指数の低い高いではなく、希望するすべての子供の入所を保障するのが自治体の責任です。この点、区長はどのように思われますか。地域的な待機児童の分析についてもお答えください。この地域に近い都有地である児童相談センター跡地の活用については繰り返し質問してきましたが、大久保出張所管内の待機児童対策としても、また、新宿区のほぼ中心で駅からも近いこの場所に保育園を設置することは区全体の待機児童対策にとっても大変効果的と考えます。東京都に対し活用したい旨を表明することを改めて求めますがいかがでしょうか。また、国有地の活用も引き続き検討を行うべきです。百人町3丁目にある国有地は、保育園別の待機児童が一番多い新栄保育園に近いのでその分園や、百人町保育園の分園など設置してはいかがでしょうか。
    全国的に待機児童数に現れない、潜在的な待機児童が問題になっています。パートや契約社員など非正規雇用のため妊娠によっていったん退職したけれど出産後再び働きたいと思っている人、仕事を探してから保育園に預けようと思っている人など、入所申請はしていないけれど希望している人は相当数に上るといわれています。ここに目を向けなければ、認可保育園をいくらつくっても待機児童はゼロになりません。区長は、潜在的な待機児童についてどう認識し、また新宿区に潜在的待機児童がどのくらいいるとお考えですか。
     以上述べてきたこともふまえ、区長は2018年4月の待機児童ゼロに向けて今後どのような対策を講じるのか、お答え下さい。
     次に、待機児童問題に関連して旧都立市ヶ谷商業高校跡地について伺います。
     東京都は3月16日、旧都立市ヶ谷商業高校跡地を東京韓国学校の用地として提供する方向で協議を始めると発表しました。私たちは、待機児童が深刻な箪笥地域にある当該跡地は保育園を設置するのに最適であり、東京都に取得の意向を示すべき、と繰り返し求めてきました。3月31日、この件について区長に要望書を提出し回答をいただきましたが、区と東京都とのやりとりの経緯については、課長レベルでの電話による問い合わせで、都に「要望を受けられない」と言われ終わっていたことが明らかになりました。都は自ら要望を拒んでおきながら、「新宿区から要望はきていない」などとマスコミに話しているのはあまりにも新宿区を軽視した対応ではないでしょうか。また区も「要望は受けられない」と言われても区の意向を明確に示すことが重要であり、要望書の提出が必要だったと考えます。区長は、今回の市ヶ谷商業高校跡地をめぐる問題について、どのような見解をお持ちですか。また、今後の都、国等への要望については、文書や公式の場での発言等、明確な方法で行うべきと考えますがいかがでしょうか。 
     この項の最後に、学童クラブについて伺います。保育園の需要が増えていくのと連動して学童クラブのニーズも年々高まっています。今年4月の状況は、登録人数が定員を超えているいわゆるオーバー館は30カ所中17カ所と半分以上であり、全体の定員1465名に対し、登録児童は1610名で、昨年度より98名も多くなっています。待機児童は昨年の70名よりは少ないものの31名もいます。今年度、学童クラブ機能付き放課後子どもひろばを昨年度の2校から16校に増やしたにもかかわらずこうした結果になったことは、学童クラブのニーズが量的にも質的にも高いということではないでしょうか。区長は4月の状況をどのように分析されていますか。学童クラブのニーズを、放課後子どもひろばの学童クラブ機能付きで代替するのではなく、学童クラブそのものを増設し、区民の願いに応えるべきと考えますが、区長の見解をお聞かせください。以上、答弁を求めます。

    (吉住区長) 待機児童対策についてのお尋ねです。
     初めに、4月の待機児童数の分析についてです。
     新宿区では、保育園の申込者数が昨年と比較して約100名増えたにもかかわらず、待機児童数は昨年より110名少ない58名となり、改善を図ることができました。これは、賃貸物件を活用した認可保育所の開設や、既存園の定員拡大、認証保育所の認可化等により保育定員を719名増やした成果と考えています。しかし、待機児童がいまだに58名いることを重く受け止めるとともに、今後もファミリー世帯の転入により就学前児童の増加等が予想されることから、引き続き待機児童の解消に向けて機動的に対応し、保育園を希望する方がすべて入園できるよう努力してまいります。
     次に、地域的な分析や国有地、都有地の活用の検討についてです。
     これまで待機児童が多かった東南地域と西北地域は一定の改善が図られましたが、大久保特別出張所や柏木特別出張所管内の待機児童が比較的目立っています。これらの地域では、短時間勤務や自営、職場でお子さんを保育しながら働く等の理由により、利用調整基本指数の低い方が多い傾向にあります。このため、来年度に向けては、既存園の定員の見直しや新規開設園で定員に空きが生じている4・5歳児の保育室を活用した定期利用保育の拡充等の手法により、この地域の待機児童の解消に努めます。
     しかしながら、こうした対応による効果が現れない場合は、子ども・子育て支援事業計画の見直しも検討しますが、その際は短期間での整備が可能な賃貸物件を活用した保育所の整備により改善を図ってまいります。このため、ご指摘の国有地や都有地の活用については考えていません。
     次に、潜在的な待機児童の認識と今後の待機児童対策についてです。
     区では、入所申請はしていないが保育園に預けたいと考えている方等の確実な把握は難しいと考えますが、こうした潜在的な保育ニーズはこれからも増えていくと認識しています。このため、フルタイムで働く方はもちろん、パートや派遣等の非正規雇用の方も安心してお子さんを預けることのできる環境整備が必要です。今後も、窓口等での丁寧な聞き取りによる保育ニーズの把握に努めながら、賃貸物件を活用した認可保育所の開設を中心とした保育定員の確保を進めるほか、保育ルームの弾力的な定員拡大や新規開設園の空いている保育室を活用した定期利用保育の拡充等の手法も取り入れながら、一日も早い待機児童解消をめざしてまいります。
     次に、旧市ヶ谷商業高校跡地についてのお尋ねです。
     区は、同跡地の保育所としての活用の可能性について、都に対し照会はしましたが、回答は、愛日小学校の仮校舎としての使用後の活用方針は未定であり、その後の跡地活用については、今後検討するとのことでした。区では、都有地の活用以外に、既に取り組んでいた賃貸物件を活用した認可保育所の公募や、既存園の定員拡大を進めることにより、待機児童の解消に一定の効果が期待できる状況であったことから、それ以上の問い合わせはいたしませんでした。都有地の活用については、所有者である都が責任を持つべきものであり、その内容について地域住民等に対して十分かつ丁寧な説明が必要であること及び地域住民等からの様々な課題の提起や要望についても真摯に受け止め、対応すべきものと考えています。
     次に、都、国等への要望についてです。
     現在でも、区の意向を明確に示す際には、要望書を提出しており、今後も、国、都へ要望する際には、要望書を適宜適切に提出して参ります。
     次に、学童クラブについてのお尋ねです。
     今年4月の状況の分析と、学童クラブニーズを学童クラブ機能付き放課後子どもひろばではなく、学童クラブの増設で対応すべきとの考え方についてです。
     学童クラブの需要数は、出席予定児童数に、待機となった児童の内、機能拡充した放課後子どもひろばに登録した児童を除いた数を加えて算出しています。本年4月1日の需要数は1468名で、昨年とほぼ同様となっており、概ね総定員の1465名に収まっています。一方、本年4月1日の機能拡充放課後子どもひろばの登録児童数は283名で、「学童クラブ機能付き」を2所から16所に拡大したことなどから、昨年の111名から大きく増加しています。近隣小学校の放課後子どもひろばの機能拡充により、定員オーバーの状況が改善された学童クラブも出てきており、今しばらく各事業の利用動向の推移を見ていく必要があると考えています。
     しかし、引き続き定員を大きく上回る学童クラブもあります。こうした状況を踏まえ、平成29年度は、時間延長型放課後子どもひろば4所を学童クラブ機能付き放課後子どもひろばとするとともに、必要な地域では、学童クラブの確保方策の拡大も検討してまいります。


    (阿部議員) 次に、子どもの貧困対策について質問します。
     今年度予算には、子どもの貧困対策として様々な事業が盛り込まれ、一定の前進を見ましたが、さらに充実させていく必要があると考えます。
     第1に、実態把握についてです。国が2012年に子どもの貧困率を16.3%と発表しましたが、地域単位で調査し実態把握を行うことが求められています。東京都は今年度、「子どもの貧困対策推進連携部会」を設置し、首都大学東京の「子ども・若者貧困研究センター」と連携して調査研究等を行うことになっています。新宿区もこうした取り組みと連携し、国が大綱で示している指標に基づく数字を明らかにし、今年度行うひとり親家庭に対するニーズ課題調査を発展させ、さらに幅広い子育て家庭に対する調査も行い、区独自の実態把握を行う必要があると思いますがいかがですか。
     第2に、ひとり親家庭に支給される児童扶養手当と児童育成手当の拡充についてです。
     ひとり親世帯の中には夜間や休日も子どもを家に残し、ダブルワークトリプルワーク等で家計をなんとか維持している方がたくさんいます。子どもに寂しい思いをさせているのではないかと後ろめたい思いを抱えながら、それでもがんばって働いて収入が少し増えたら所得制限で手当を切られてしまう、なかなか一般世帯の所得水準に追いつかないひとり親世帯、特に母子世帯のこうした実態を区長はどう認識されていますか。
     国会では子どもの貧困対策として児童扶養手当法が改正され、支給額を第1子は改正前と変わらず4万2千円ですが、第2子の加算額は5千円から1万円に、第3子以降の加算は3千円から6千円に引き上げられました。しかし、所得制限は変わらず、子ども1人の場合、所得57万円、額面年収140万円程度以下でなければ全額支給されず、一部支給されるのは所得230万円、年収約350万円以下で、これ以上あれば支給されません。ひとり親世帯の所得水準を引き上げ、親子の時間を保障するために、最低賃金の引き上げや非正規雇用の正規化等、働き方の改善とともに、児童扶養手当のさらなる拡充が必要です。所得制限を引き上げること、支給額の増額、支給対象を20歳未満の学生まで引き上げることは喫緊の課題であり、国に要求すべきと考えますが、いかがですか。また、東京都の児童育成手当は、月額1万3500円ですが、20年間も据え置きのままです。増額を求めていただきたいと思いますがいかがでしょうか。この2つの手当と国の児童手当の支給は、いずれも年3回、4ヶ月に1回です。家計の様々な支払いは基本月単位です。必要な時に支給されなければ意味がありません。国及び東京都に対し各手当を月々支給するよう要望すべきですがいかがでしょうか。
     第3に、高校卒業後の進学に向けた支援についてです。
     貧困の連鎖を止めるためには学習する権利・進学する権利を保障することが不可欠です。生活保護世帯の小学校4年から中学生までの塾代・受験料補助を高校生まで拡大することについては、第1回定例会でも求めましたが区はかたくなに拒みました。しかしこの事業に100%補助している東京都は、同時期に開かれていた都議会で、「区市が申し出れば補助対象とすることは可能」と答弁しているのですから踏み出すべきです。港区は、今年度から高校生まで拡大し、新たに塾に通うための交通費支給も実施しています。港区に伺うと、「生活保護世帯の高校生の中退率が一般より高いことから、受験勉強に特化した塾ではなく、授業の補習的な塾を想定している。」ということでした。生活保護世帯を除く低所得世帯向けの受験生チャレンジ支援助成は高校生にも塾代受験料を補助しているのです。なぜ生活保護世帯の高校生は塾に行くことを保障されないのでしょうか。改めて高校生までの拡大を求めるものですが区長の見解をお聞かせ下さい。
     第4に、就学援助の中学校入学準備金の拡充・改善です。
     就学援助の入学準備金は定額で、小学校は23890円、中学校は26860円です。中学校の入学に必要な費用は、制服代が5~6万円、体操着や通学バッグ、上履き等合わせると10万円前後といわれています。制服のない小学校とほぼ同額ではあまりにも少なすぎます。支給額は実態に合わせ、増額すべきと考えますがいかがですか。
     支給時期も問題です。入学後の就学援助の収入認定を待って7月中旬に支給されるので、実際に準備する3月には全て自力で購入しなければなりません。ある区民の方は親戚に借金をして準備をしたそうです。板橋区は数年前から、世田谷区、八王子市は今年度から中学校入学準備金については3月に支給することになりました。世田谷区は、「以前から支給を早くしてほしいとの意見が多数あった。考え方を変えて、6年生ですでに認定している児童には支給することにした」そうです。こうした先行自治体の例も参考にして、中学校の入学準備金は7月ではなく3月支給に早めることを求めますがいかがですか。以上、答弁を求めます。

    (吉住区長) 子どもの貧困対策についてのお尋ねです。
     初めに、実態把握についてです。
    まず、大学の調査研究と連携し、国が大綱で示している指標に基づく数字を明らかにし、ひとり親家庭に対するニーズや課題の調査を発展させることについてお答えします。
     区は、昨年10月から「子どもの貧困対策検討連絡会議」を設置し、子どもの貧困に関する実態や課題についての共通認識のもと、関係部署が連携し、実効性の高い施策や切れ目のない支援を展開しています。今年度、東京都は首都大学東京の「子ども・若者貧困研究センター」と連携して調査研究等を行うこととしており、新宿区、足立区、八王子市の3区市が調査の対象となっています。国が大綱で示している指標のうち、区で把握していないものについては、この調査結果を受け、補完してまいります。また、区が今年度実施する、ひとり親家庭のニーズや課題についての調査は、ひとり親家庭のうち、児童扶養手当を受給している方を対象に行う予定で、現在準備を進めているところです。区の状況を把握するにあたり、必要な事項については、調査内容に盛り込んでいきたいと考えています。
     次に、幅広い子育て家庭に対する調査と、区独自の実態把握についてです。
     区は、「子どもの貧困対策検討連絡会議」で、関係各課の日々の業務における事例等について情報共有を図るとともに、区内で活動する団体等にヒアリングを行い、数値としてあらわれにくい区独自の実態について、把握に努めているところです。したがって、貧困の実態を把握することを目的とした子育て家庭に対する調査を実施する予定はありません。
     次に、ひとり親家庭に支給される児童扶養手当と児童育成手当の拡充についてです。
     ひとり親世帯の所得水準については、一般世帯の所得水準には及ばず、特に母子世帯において、厳しい状況であると認識しています。そのため、区では、ひとり親世帯の経済的負担の軽減として、本年4月から、認可保育所や子ども園等の保育料について、国の所得制限に上乗せするとともに、区独自に、認証保育所保育料や学童クラブ利用料を助成し、支援をしているところです。
     次に、児童扶養手当のさらなる拡充についてです。
     本年5月に児童扶養手当法の一部を改正する法律が可決されたところですが、その際、附帯決議がなされています。そこには、「児童扶養手当の加算額を含む支給額については、ひとり親家庭の所得状況及び生活実態、今後の社会経済状況の変化等を踏まえつつ、ひとり親家庭の生活の安定と自立の促進に寄与するという制度の目的及び趣旨が実現されるよう、引き続き、その在り方について検討し、検討結果に基づき適切な措置を講ずること」とあります。したがって、今後、国において、この附帯決議を受けた検討がなされると認識していますので、所得制限の引上げや支給額の増額、20歳未満の学生まで引き上げることについて、国に要求することは考えておりません。
     次に、東京都の児童育成手当の増額についてです。
     東京都の児童育成手当は、都が独自の支援として、国に上乗せして実施しているものです。ひとり親家庭の支援については、本来、国が実施すべきであることから、増額について、東京都へ要望することは考えていません。
     次に、国及び東京都に対し各手当を月々支給するよう要望すべきとのお尋ねです。
     児童扶養手当法の一部を改正する法律可決の際の附帯決議において、「児童扶養手当の支払方法については、地方公共団体における手当の支給実務の負担等を含めた状況を調査するとともに、ひとり親家庭の利便性の向上及び家計の安定を図る観点から、支給回数について隔月支給にすること等を含め、所要の措置を検討すること。」とされています。区においては、手当の支給実務にかかる負担が大きいことから、状況調査がなされた場合は、人件費を含めた相応の経費について国に実態を伝え、それを踏まえたうえで、支給月の検討をするよう要望していく必要があると認識しています。また、東京都の児童育成手当は、先に述べましたとおり、国に上乗せした独自の制度ですので、支給月を毎月にするよう要望することは考えておりません。
     次に、高校卒業後の進学へ向けた支援についてのお尋ねです。
    生活保護受給世帯の子どもへの学習に関する支援については、まず高校進学率上昇に取り組むことが重要な課題と考えています。そのために区では、生活保護受給世帯を含む「生活困窮世帯」の中学生に対し、高校進学を目的とした学習支援を実施するとともに、高校に進学した生徒に対しても、1年生の8月まで学習定着支援を実施しているところです。
    また、高校に進学した後の支援としては、平成26年度から国の高校生等奨学給付金制度が始まり、更に高校生のアルバイト収入等から塾代が収入認定除外となるなど、国の取り組みが進んでいます。
     高校生の中退防止についても、大切な課題と捉えていますが、新宿区の生活保護受給者の高校中退者数は平成25年度は0人、平成26年度は1人と少ない状況でした。昨年度は7人と増えておりますが、中退の主な理由は、家庭環境や友人関係などとなっています。
    そのため、今のところ高校生の中退防止のために区独自の塾代助成を行うことは考えていませんが、学習定着支援を活用しながら高校進学後の状況を注視していくとともに、中退者が発生した場合には、その原因を分析して、必要な施策を検討してまいります。
    また、併せて国や都の動向も注視しながら、生活保護受給世帯の子どもたちへの学習支援に取り組んでまいります。
    (酒井教育長) 教育委員会へのご質問にお答えします。
     就学援助の、中学校への新入学学用品費についての支給金額と、時期についてのお尋ねです。
     子どもを健やかに育てる環境づくりをより一層進め、すべての子どもたちが教育を等しく受けることができるよう就学援助制度の充実は重要であると認識しています。こうした負担軽減のため、就学援助の認定所得基準は、引き続き生活保護基準の見直しの影響が及ばないように改定前の基準で認定を行い、配慮を続けているところです。
     支給額については、国の「要保護児童生徒援助費補助金」に示された単価を基本とし決定しており、他区市町村の例を参酌しても適切であると考えます。 
     支給時期につきましては、他区の状況等も調査、研究をし、経済的理由により児童生徒の就学が困難にならないよう就学援助制度の趣旨に基づき、適切な運用をさらに考えてまいります。


    (阿部議員) 次に、雇用対策についてうかがいます。
     日本では、女性は男性の7割、非正規は正規の6割の賃金ときわめて格差が大きいく、これが格差と貧困を拡大している要因です。しかも、相次ぐ労働者派遣法改悪によって非正規雇用が2000万人を超え、全労働者の約4割、若者の2人に1人、女性は57%が非正規雇用で、その多くが年収200万以下のワーキング・プアです。安倍内閣もこの問題を避けて通ることはできず、先頃出された「ニッポン1億総活躍プラン」で同一労働同一賃金実現の方向が示されました。しかし安倍内閣が6月2日閣議決定した「プラン」では、パートタイム労働法などの法改正は掲げたものの、合理的な待遇差をガイドラインで示すとして、逆に格差を容認する方向が示されました。
     区長は、男女や正規・非正規でこれほどまでに賃金に格差がある現状についてどのような認識を持っておられますか。とりわけ、若い世代が低賃金・非正規雇用のままでは、税収や社会保障の持続可能性から見ても看過できない課題だと考えるものですが、いかがお考えですか。また、格差を解消するためには何が実効性を持つとお考えかお聞かせ下さい。
     公務労働の分野で深刻なのは、非正規雇用が拡がっていることです。区が行っている事業では、非常勤、派遣、アルバイトなどの雇用形態で多くの非正規労働者が働いています。区の正規職員数、再任用・再雇用職員数、非正規雇用の形態別の職員数と男女比率はどうなっていますか。パート・アルバイトは業務の繁閑により日々変動するとのことですから、本年4月1日現在の数字で結構ですので、お示しください。
     望んでも正社員になれない「不本意非正規労働者」が2000万非正規社員中18%いるとして、政府はこれを5カ年で10%以下にするという「正社員転換・待遇改善実現プラン」を打ち出しました。今年度中に地域プランつくり、自治体・事業主・労働団体と連携して取り組むことになります。区も区の業務に従事する非常勤職員に正規への転換希望を調査し、これに応えるべきと考えます。また、国も東京都も予算を計上し、正規への転換や待遇改善に誘導しようとしています。区としてその内容を区内企業に周知し、活用を促すべきと考えますが、いかがですか。
     最低賃金引き上げが賃金格差是正、貧困解消に効果があることは言うまでもありません。「1億総活躍プラン」でも最低賃金引き上げを示していますが、年率3%上昇では東京の最賃が1000円になるには4年、全国最下位の693円の県では10年以上必要です。区長は、今すぐ最低賃金を1000円に引き上げ、1500円を目指すことを政府に要望すべきと考えますが、いかがですか。その際は中小企業に対して必要な支援をする必要があることは言うまでもありません。
     さて、区の臨時職員の賃金はどうでしょうか。昨年東京の最低賃金が907円にアップしたのを受け、アルバイトの時給を事務職は970円、現業は940円にしました。因みに、この額は23区では高い方から6番目とのことです。新宿区のアルバイトとしてフルタイムで一ケ月働いても、額面で15万円程度、ここから税金や国保料を払ったら、手元に残ったお金で自活することはほとんど困難だと思いますが、区長はそうは思いませんか。こうした官製ワーキングプアをなくすために、アルバイトの時給を引き上げるべきです。渋谷区は交通費込みで3時間で3700円、4時間で4700円、フルタイムの7時間45分なら8800円で雇用しており、時給が1000円を超過しています。新宿区でも今すぐ時給1000円以上に引き上げるべきと考えますが、いかがですか。
     非正規で働く女性が産前産後休暇や育児休業を取得できないマタニティハラスメントも深刻です。NPO法人の昨年の調査で、非正規労働者が産休や育休をとって職場復帰できたのは24%、4人に1人しかいないという結果が出ました。退職強要や雇い止めが過半数で、非正規には産休さえない実態も浮き彫りにされました。ワーク・ライフ・バランスどころか、ワークから閉め出され、保育園に預けられず、生活バランスが崩れています。2018年度からの新たな男女共同参画計画の策定にあたっては、こうした新宿区内の事業所で働く非正規労働者のシビアな実態も調査し、解決策を講ずるべきと考えますが、区長の見解をうかがいます。
     過労死を生むような働き方の改善も急務です。「過労死防止対策推進法」が成立し、「過労死等の防止のための対策に関する大綱」も発表されました。大綱では、地方公共団体は、雇用主として職員の職種の職務実態を踏まえた対策を講ずるよう努めるとともに、住民への啓発、中学校・高校等で労働に関する指導の充実、企業に対する啓発や有給休暇取得の機運醸成、メンタルヘルス、パワーハラスメント予防の周知・啓発に取り組むことが示されています。区ではこれらの取り組みはどうなっているのかうかがいます。
     若者を過労自殺に追い込むようなブラック企業が社会問題化する中、「若者雇用促進法」が成立し、ハローワークでの新卒求人に際して職場情報の提供義務が課せられるようになりました。大学生・高校生に長時間労働を強いたり、残業代を払わないブラックバイトも問題となり、厚生労働省の実態調査では、大学生の6割、高校生の3割以上がトラブルを経験しています。
     区内労働組合の労働相談には、ブラック企業・ブラックバイトなどの相談が多数寄せられていると聞いています。新宿区の次期総合計画を策定するに際して、次世代を担う若者世代の働き方や雇用実態を調査することは意義あることだと考えますが、区長の認識をお示し下さい。また、私たちはこれまでも労働相談窓口開設を要望してきましたが、改めて整備を求めます。そして、区として労働関係法令の基礎知識を身につける学習の機会つくるとともに、個別相談にも応じて労基署等関係機関と連携して改善・是正に努めるべきと考えますが、区長の見解をうかがいます。

    (吉住区長) 雇用対策についてのお尋ねです。
     まず、男女や正規・非正規で賃金に格差がある現状や、若い世代の低賃金・非正規雇用に対する課題認識についてです。
     ご指摘のとおり、平成27年の厚生労働省の賃金構造基本統計調査によると、徐々に改善の傾向にあるものの依然として女性は男性の72.2%、非正規は正規の63.9%といった賃金の状況があります。こうした、男女や正規・非正規等の格差は、社会が持続的に成長を遂げていくうえでひとつの障壁であり、「ニッポン1億総活躍プラン」の中で示された「同一労働同一賃金」の実現に向け、官民一体で取り組む重要な課題であると認識しています。区では、若者を中心に正規雇用への移行などを支援するため、今年度から東京都の補助金を活用し、区内中小企業等において非正規従業員の正規従業員化等を支援する「“働きたい職場づくり”応援事業」と、若者の正規雇用と育成に積極的に取り組む区内中小企業と就職意欲のある若者のマッチングを支援する「U29(アンダー29)就職マッチング支援事業」を実施しているところです。
     また、東京都は東京労働局と連携して「非正規雇用労働者の正規雇用化」に関する事業主向け支援サービスについてワンストップで提供する窓口を、ハローワーク新宿庁舎内に開設しています。このように、国を中心に都道府県、区市町村、事業者など、それぞれが格差の是正に向けた取り組みを進めることにより格差解消の実効性が高まるものと考えています。
    次に、正規職員、再任用・再雇用職員数、非正規雇用の形態別の職員数と男女比率のお尋ねです。
    ご指摘のとおり、区では、病欠や育休職員の業務の補助・代替として、また、一時的な業務増等に対応するため、あるいは、資格等を必要とする専門業務を行うために、多くの非常勤職員、臨時職員や派遣労働者が従事しています。お尋ねの本年4月1日現在の職員数及び男女比率は、正規職員は2,687名で男性47.2%、女性52.8%、再任用・再雇用職員は353名で男性58.6%、女性41.4%となっています。また、非常勤職員は547名で男性19.7%、女性80.3%、臨時職員は231名で、男性8.7%、女性91.3%、派遣労働者は80名で男性16.3%、女性83.7%となっています。
     次に、区の業務に従事する非常勤職員に正規への転換希望を調査し、これに応えるべきとの考えについてです。
     地方公務員の採用に当たっては、地方公務員法の規定により、客観的な能力の実証に基づいて採用する「成績主義」の原則があり、このために、特別区人事委員会の行う競争試験や特別区人事委員会から任命権者に委任された選考により、成績順に採用を決定しています。そのため、競争試験や選考を経ずに、非常勤職員の転換希望によってのみ、正規職員として採用することはできませんので、正規への転換希望調査を行うことは考えていません。ただし、特別区職員の採用試験等の受験資格のある非常勤職員の方が、競争試験等を経て正規職員に採用される例もあるところであり、適宜、各職場を通じて非常勤職員にも、採用試験等の募集に関する情報を提供しているところです。
     次に、国や東京都が実施している正規への転換や待遇改善の事業について、その内容を区内企業に周知し、活用を促すことについてのお尋ねです。
     ご指摘のとおり、国や都は雇用環境改善を目的として、企業に対する様々な事業と支援策を実施しています。今後、区でも、これらの事業について、東京商工会議所新宿支部との連携を通じて会員企業にお知らせしていくほか、区のホームページからも周知を図ってまいります。また、区では、正規雇用への移行などを支援する「“働きたい職場づくり”応援事業」や、若者の正規雇用での就職を支援する「U29(アンダー29)就職マッチング支援事業」を実施していますので、これらの事業周知の機会もとらえて国や東京都の制度も活用していただけるよう努めてまいります。
     次に、最低賃金を1000円に引き上げ1500円を目指すことを政府に要望すべきとのお尋ねです。
     東京都の最低賃金の額は、労働者の生計費、類似の労働者の賃金、通常の事業の支払能力を考慮し、東京地方最低賃金審議会の意見を聴いて、東京労働局長が決定しています。区としては、地域や産業の状況に即した最低賃金の額を、労使の代表である委員を含めた審議会において調査し決定する現行法の枠組みは適切であると認識しています。したがって、最低賃金引き上げに際しては現行法の中で行われるべきと考えており、また、国の「1億総活躍プラン」の柱の一つである「働き方改革」の中でも、最低賃金引き上げについて取り組みが進められていることから、区として国へ要望する考えはありません。
     次に、アルバイトの時給を1,000円以上に引き上げることについてのお尋ねです。
     区の臨時職員は、永続的な職業としてではなく、短期間又は季節的業務等の職として雇用しているところです。その賃金単価は、民間正規従業員の給与水準をベースに、生計費や経済情勢等様々な要素を反映して決定されている、区の正規職員の初任給をもとに算出しており、適正な水準であると考えています。臨時職員の職の性格及び正規職員の初任給や他区・民間等の賃金における時間単価との均衡を考えると、直ちに時給を1,000円以上に引き上げることは困難と考えます。
     次に、新たな男女共同参画推進計画の策定にあたり、新宿区内事業所の女性の非正規労働者について、実態を調査し、解決策を講ずるべきとのお尋ねです。
     平成29年度までを計画期間とする第二次男女共同参画推進計画策定にあたっての基礎資料として、区内企業の現状や取組みを把握するため、平成22年に「ワーク・ライフ・バランスに関する企業および従業員の意識・実態調査」を実施しました。そのなかで、セクシャル・ハラスメントとパワー・ハラスメント防止の取組み状況の調査をしています。セクハラ防止の取組み状況として「就業規則等の一項目として職場のハラスメント禁止を規定している」事業所の割合は50.1%、パワハラ防止に取り組んでいる事業所の割合は32.6%でした。しかし、従業員規模の小さい事業所では取組みの割合が低くなっているという課題が明らかになりました。区では、ワーク・ライフ・バランス推進企業認定制度を平成19年度から立ち上げ、中小企業が圧倒的に多い区内企業における働き方の環境整備に取り組んできました。さらに、平成26年度からは、日本生産性本部との協働事業により、経営者向けのセミナー等を開催し、経営者や人事担当者など、経営層の意識改革にも取り組んでいます。今年度実施する第三次男女共同参画推進計画策定の基礎資料とするための意識・実態調査では、セクハラ、パワハラのほかに、マタニティ・ハラスメント防止についての事業所の取組みも調査項目に加えることを検討しています。平成30年度を計画期間の始めとする第三次男女共同参画推進計画の策定にあたっては、マタハラ防止も含め、社会情勢の変化を踏まえた検討を行ってまいります。
     次に、過労死を生むような働き方の改善に関するお尋ねです。
     はじめに、事業主としての対応についてですが、区ではこれまでも、ノー残業デーにおける定時退庁の徹底、月80時間以上の超過勤務実績の職員に対する産業医面談の実施、全管理職に対するメンタルヘルス講習会の実施など、職種にかかわらず全職員を対象に、長時間労働の予防、ワーク・ライフ・バランスの推進やメンタルヘルス対策に取り組んでいます。本年度におきましても、精神科産業医の面談を月2回から4回に増やし相談態勢の充実を図ったところです。今後も様々な方策に主体的に取り組むことにより、職員の働き方の改善に努めて参ります。
     次に、中学校・高校での労働に関する指導についてですが、中学校3年生で社会生活における職業の意義と役割及び雇用条件の改善等について教えており、例えば、新聞の求人欄や折り込み広告などを活用して、グループで話し合う等の工夫をするなど、高校での学びに繋がる指導を行っていると、教育委員会から聞いております。
     次に、住民や企業に対してですが、区は、ハローワークや地域産業保健センター等関係機関からなる「働く人のメンタルヘルスネットワーク連絡会」を開催し、働く世代のメンタルヘルスに取り組んでいます。また、精神保健講演会やハラスメントに関するセミナーの開催、パンフレットの配布などにより、情報提供と意識啓発に努めています。
     次に、若者世代の働き方や雇用実態を調査することについてのお尋ねです。
     次世代を担う若者が、その力を十分に発揮して社会で活躍することは、活力あふれる地域社会を築いていくために大変重要なことであると考えています。区は、現在、様々な若者の就労支援に取り組んでいますが、平成30年度からの新総合計画の策定に向けて、支援施策をより一層効果的に推進できるよう区民意識調査や就労支援事業などの機会を通して若者世代の働き方や雇用状況等の把握に努めてまいります。
     次に、区の労働相談窓口の開設及び労働基準監督署等との連携についてのお尋ねです。
     新宿区内では、百人町に労働基準監督署が開設する新宿総合労働相談コーナーが、また飯田橋に労働問題全般の相談を受ける東京都労働相談情報センターが相談窓口を開設しており、区に相談があった際に必要に応じて丁寧にご案内するなど、適切に対応しています。このため、区が直接相談窓口を設置することは考えておりませんが、今後も相談者の状況に応じて関係機関と連携を深めながら、きめ細かな対応を進めてまいります。
     また、労働関係法令の学習機会や労働基準監督署等との連携についてですが、区は、若者が雇用に関する知識を身につけることが必要であると考え、労働法を学習する機会の提供と啓発活動に取り組んでいるところです。今年の4月に、区内専門学校の学生約400名を対象に、厚生労働省が作成した「アルバイトを始める前に知っておきたい7つのポイント」など、学生を対象としたパンフレットを配布するとともに、雇用条件を確認することの重要性を説明し、困ったときに相談できる窓口を案内する啓発を行いました。また、労働基準監督署と連携して労働法を学ぶ講座も推進しており、7月に若者サポートステーションの利用者を対象とした講座と、区内の大学で学生を対象とした講座を開催する予定です。今後も関係機関と連携を図りながら、若者の就労環境改善に努めてまいります。


    (阿部議員) 次に地震対策について質問します。
     4月14日夜9時26分に起きた熊本地震は、マグニチュード6.5、最大震度7で、「前震」に続く「本震」と、その後も大きな余震が続くという、今までとは異なる特徴です。深さ11キロメートルと震源が浅い直下型地震であったこと、震源付近の断層帯による「横ずれ断層型」の地震が原因とされています。今回の熊本地震の教訓を、今後の地震対策に活かすことこそ重要です。
     第1の質問は、命を守る住宅の耐震化です。
     熊本地震は、大きな揺れが何度も襲ったことによる住宅の倒壊、半壊が多く、大半は未耐震の住宅で、死亡者の原因も多くは住宅の倒壊によるものでした。新宿区内にも活断層があると指摘されており、とりわけ1981年5月以前の建物の耐震化が急がれます。
     1つ目の質問は、木造住宅の不燃化建替え及び除却工事費用の助成対象地区の拡充です。この6月から新たに、木造住宅の不燃化建替え及び除却工事費用の助成が始まりました。区報を見た区民から早速問い合わせがきています。しかし、助成対象地区は木造住宅密集地域等のうち「新たな防火指定を受けた地区」等と限定したため、助成対象となるのは100ha、区全体のわずか5.5%です。未耐震の住宅は、区内全域にあります。助成対象地域を限定せず、全域に広げるべきです。少なくとも、区内の3分の1を占める約600haの木造密集地域までは助成対象とすべきと考えますが、いかがでしょうか。
     2つ目は、木造住宅に対する耐震化支援事業の補助区分を解消することです。木造住宅の耐震化支援事業の所得制限は今年度から撤廃されましたが、補助の上限額が、重点地区と非課税世帯のA区分は300万円ですが、高齢者または障害者の方が居住する世帯のB区分が200万円、それ以外のC区分は100万円と区分され、補助上限額に差があるため、この間A区分以外ではほとんど耐震補強工事への助成は行われていません。耐震化支援事業の補助金上限額はおしなべて300万円にする思い切った策をとることが求められていますが、いかがでしょうか。
     3つ目は、無接道敷地の建替えの新たな許可基準についてです。無接道敷地の老朽化した建築物の建替えにより、耐震化及び不燃化を図り、新宿区の高度防災都市化を推進するため、昨年度から「通路タイプ」を、そして今年度から「路地状敷地タイプ」を対象に、無接道敷地の建替えが可能となる画期的な許可基準の変更を行いました。これまで、建替えを諦めていた世帯がこれによって建替えが出来れば地震に強い安全な住宅になります。基準変更の内容は区のホームページに掲載し、過去に建築指導課に相談していた方には電話で案内したと聞いていますが、改めて文書でもお知らせすべきです。また、耐震診断で要耐震と判定されながら工事未実施の方にも個別の周知を行い、区報や区の掲示板でも周知すべきと思いますが、いかがでしょうか。
     質問の第2は、擁壁・がけ改修等支援事業についてです。
     熊本地震では、土砂崩れや盛り土等による造成地の被害が多発し、3市町村で「被災宅地危険度判定」の結果「立ち入りが危険」と判定された敷地が1182件もありました。そうした被害は新宿区内でも起こりえます。高さ1.5m以上の擁壁及びがけ約3500カ所のうち、「不健全」「やや不健全」とされた約1100カ所の改修・補修は待ったなしです。
     この制度は今年度改善が行われ、接道する道路の条件を建築基準法の42条の規定道路、いわゆる一般道までに広げ、所得制限を撤廃しました。しかし、区内にある擁壁・崖地は道路に面しているところだけではありません。例えば、区立早稲田幼稚園の園庭と隣地との境は古い崖で、区の点検で「やや不健全」とされていますが、道路と面していないため助成の対象外です。所有者は数軒の隣地住民ですが、5m近い崖を改修する何千万ものお金を用意できる方はほとんど居ませんから、所有者任せでは進みません。しかし万一の時、危険にさらされるのは幼稚園の子どもたちです。このような公共性の高いがけや擁壁は、区の責任で改修することを検討すべきです。改修等が進まない要因は、補助額が実態とかけ離れているからです。高さだけでなく幅も考慮するなど実態に合わせて補助額を増額すべきです。また条件も、道路に面していることだけでなく、崖下に住宅が存在すること等にも拡充すべきです。以上、3点お答えください。
     質問の第3は、地震の際に火災から家を守る感震ブレーカーの設置助成についてです。
     阪神淡路大震災では、原因が特定された建物火災の6割が通電火災によるものと判明しており、首都直下型地震でも同様の危険が心配されています。感震ブレーカーは、揺れを感知すると自動で通電を遮断するもので、地震火災防止に効果的だとして、政府も普及に力を入れています。中央防災会議は、この設置により首都直下型地震で焼失家屋を半数近く減らせると分析しています。そのためこの間、感震ブレーカー設置費用を助成する自治体が増えています。横浜市は、全国に先駆けて2014年度から助成事業を開始し、10年間で設置率を10%にする計画です。東京23区では、足立区が昨年度から助成を行っており、今年度から始めたのが世田谷、杉並、目黒、品川区です。首都直下型地震による新宿区の被害想定は最大時、火災による死者64名、建物火災2179棟となっています。新宿区でも焼失家屋を大幅に減少させ、多くの区民の命を守ることができる感震ブレーカー設置費用助成を実施すべきと思いますが、いかがですか。以上、答弁願います。

    (吉住区長) 地震対策についてのお尋ねです。
     木造住宅の不燃化建替え及び除却工事費用の助成対象地区の拡大についてです。
     助成対象地区については、木造住宅密集地域のうち、地区計画の地区整備計画が定められている地区、又は、新たな防火規制が指定されている地区、不燃化特区、防災再開発促進地区のいずれかに該当する地区としました。これらの地区については、木造住宅密集地域の中でも、特に不燃化を促進するため、地域住民が主体に防災まちづくりに取り組んでいる地区や、法令等により不燃化の促進が位置付けられている地区を助成対象としました。このため、木造住宅密集地域の全域を助成対象とする考えはありませんが、今後、木造住宅密集地域で、新たに地区計画の地区整備計画等が指定された地区については、順次、助成対象にしていく予定です。
     次に、木造住宅に対する耐震化支援事業の補助区分を解消することについてのお尋ねです。
     建築物の耐震化は、それぞれの所有者が、自らの責務として取り組むことが基本であると考えております。区は、所有者の状況や地域危険度等に応じたA、B、Cの補助区分の設定をはじめ、簡易耐震改修や道路突出・無接道敷地を補助対象とするなど、きめ細かな支援メニューを提供することで、所有者の主体的な取り組みを促し、建築物の耐震化を促進しています。このため、ご指摘のA、B、Cの補助区分を解消することは、現在のところ、考えておりません。
     次に、無接道敷地の建替えの新たな許可基準についてのお尋ねです。
     無接道敷地の建替えの許可基準については、昨年度制定した基準に加え、本年4月から新たな基準の適用を始めています。許可基準の周知については、新宿区公式ホームページや、過去に相談を受けた方への電話案内などを既に実施しているところです。今後は、さらに「広報しんじゅく」に繰り返し掲載するとともに、これまで無接道敷地の建替えや耐震診断の相談を受けた方には文書等でお知らせしてまいります。
     次に、擁壁・がけ改修等支援事業についてのお尋ねです。
     擁壁等の改修については、第一義的には、所有者が自らの責務として取り組むことが基本であると考えています。しかし、擁壁等が崩壊した場合に、人命や財産への被害が大きいものや、道路閉塞による救助救援活動への影響が大きいものについては、区が関与することも必要と考え、改修工事費助成や、コンサルタント派遣などにより安全化に向けた支援を行っています。ご指摘のような、補助の対象にならない崖や擁壁については、改修工法や関係者の合意形成などについて、専門的なアドバイスを行うコンサルタント派遣を行うことにより、安全化を促進してまいります。改修工事費の補助額については、補助は敷地単位であり、実際に造る擁壁の高さに応じて幅を想定するなど、実態を踏まえて算出したものですので、ご指摘の補助額を増額することは考えていません。崖下に住宅がある擁壁等については、急傾斜地崩壊危険箇所のものや高さが5メートル以上で、住宅が近接しているものは、崩壊した場合に大きな被害をもたらす恐れがあることから、既に補助対象としています。そのため、新たに崖下に住宅があることをもって、補助対象にすることは、考えていません。
     次に、感震ブレーカー設置助成についてのお尋ねです。
     昨年度、内閣府が川口市、世田谷区、茅ケ崎市をモデル地域として、感震ブレーカーの普及についての調査を実施し、重りの落下などによりブレーカーを落として電気を遮断するといった簡易タイプでも約3割の住民が自分で設置できないことや、感震ブレーカーの作動により照明が消えてしまうことなどへの不安感が課題としてあげられています。また、今後必要とされる取組みとして、住民、住宅・不動産関係団体等への普及・啓発活動や、地域が一体となった普及の取組み、照明等への通電の継続など防災性の向上と住民ニーズの両立が可能な機器の開発等が示されています。区では、本年4月より、防災用品のあっせん品目として、比較的安価かつ、取付けが容易で電熱器具などに限定して電気を遮断でき、照明器具はそのまま点灯しておけることが可能となるコンセントタイプをあっせんしていますが、現時点ではあっせん実績はありません。今後は、国の感震ブレーカーの普及に向けた取り組みや他自治体の動向などを注視し、感震ブレーカーの普及や助成等のあり方について検討してまいります。


    (阿部議員) 次にLGBTついて質問します。
     同性愛は「非行」「治療」の対象とされていた時代がありましたが、アメリカ精神医学会やWHOが異常・倒錯・疾患等ではないとし、日本精神神経学会もこれに続いています。また、1994年に当時の文部省も「性非行」の項目から同性愛を除外しました。さらに文部科学省は、2015年4月30日、同性愛・両性愛を含む性的マイノリテイの児童生徒についての相談体制等の充実を図るように教育委員会などに通知を出し、矯正が必要な非行少年からケアが必要な児童生徒であるとの考えに大きく変化しました。
     我が党区議団は、昨年おこなった区政アンケートでLGBTについて質問項目を設けました。回答のあった1243名のうち、LGBTという言葉を知っていると答えた人が44%の553人、知らないという人が37%の458人でした。また、新宿区でも条例を制定すべきかの問いに対し、制定すべきが462人で37%、制定すべきでないが237人の19%、わからないが395人で32%でした。回答の中では「当事者です。渋谷の制度は登録へのハードルが高い割には法的効力に乏しいなど多くの問題があります。新宿ではこれらの欠点を克服した先進的な条例の制定を希望」との意見がある反面、「子どもの増加が期待できない」「同性愛そのものが理解できない」などの意見もありました。このアンケート結果からもLGBTに対する偏見が克服され、社会の中でも生きづらさがなくなることが求められています。
     最初に教育委員会に質問いたします。
     性的マイノリティの視点を包括した自殺対策に取り組んでいる団体「いのちリスペクト。ホワイトリボン・キャンペーン」が2013年に行った「LGBTの学校生活に関する実態調査」によると、LGBTを本人が自覚するのは学校生活を送る時期で、中学生の時に自覚した人が37%になっています。特に学校では制服やトイレ、クラブ活動、健康診断など男女別に区分されることが数多くあり、日々苦痛を感じながら生活しています。差別やからかい、いじめにあうケースも多く、不登校や自傷行為に及んだり、自殺を考えたりする子どもみられ、教育現場の理解や配慮が求められます。
     第一に、児童生徒への啓発です。現在、小中学生についてはLGBTについて保健体育などの教科書にも記載されず、理解する機会がないといわれていますが、文科省の2015年通知に関する区の取り組みはどのようにされているでしょうか。特にLGBTを理解するためのパンフレットの作成や、他自治体ではすでに行われている当事者及び支援団体による出前授業などLGBTを理解するための機会を設けることが重要だと思いますが、いかがですか。
     第二に、教職員の理解を深めることについてです。今年度、文科省が作成した教員向け手引き書である「性同一性障害や性的指向・性自認に係る、児童生徒に対するきめ細かな対応等の実施について」を活用した研修を行い、現役教職員全員に受講を促すべきと思いますがいかがですか。
     第三に、「新宿区いじめ防止等のための基本方針」の未然防止に向けたとりくみとして、LGBTについても項目を明記してはいかがでしょうか。
     次に区長に伺います。
     第一に、トイレの改善です。すでに、区の公共施設や事業者でもだれでもトイレが普及していますがさらに増やすとともに、だれでもトイレのドアには男女のシルエットだけでなくLGBTの方も利用しやすいように工夫すべきではないでしょうか。
     第二に、同姓パートナーシップについてです。昨年、区長は性的少数者の人権に関する課題については必要に応じて男女共同参画推進会議で調査審議するものと考えていると答弁していますが、この間、調査審議した内容があればお示し下さい。この会議に当事者を加える、ヒアリングを行うなど、条例制定へ向け直ちに検討を始めるべきと思いますがいかがですか。現在相談窓口はありますが、相談とともに制度の実現こそがLGBTの方たちを励ますことになるのではないでしょうか。区長の見解を求めます。

    (吉住区長) LGBTについてのお尋ねです。
     まず、だれでもトイレを増設し、LGBTの方にも利用しやすいよう工夫すべきとのお尋ねです。
     だれでもトイレは、「高齢者、障害者等が利用しやすい建築物の整備に関する条例」に基づき、公共施設などの建築時に設置が義務化されており、今後も増加していくものと考えています。
    また、昨年度、全庁的に「窓口等でのLGBT等性的マイノリティに関する支障事例調査」を実施し、支障事例の把握と今後の対応策をまとめたところです。区施設のだれでもトイレの表示方法については、現在必ずしも性同一性障害等の方に配慮したものとはなっていないことから、今後、工夫してまいります。こうした工夫の中で、LGBTの方への配慮について、普及啓発を図っていきたいと考えております。
     次に、同性パートナーシップについてのお尋ねです。
     まず、男女共同参画推進会議のなかで、性的少数者の人権に関する課題を調査審議した内容についてです。昨年10月に開催した第5回新宿区男女共同参画推進会議で、LGBT当事者から、当事者としての思いやLGBTをめぐる現状等を伺い、提言をいただくとともに意見交換を行いました。これらを踏まえて、第二次男女共同参画推進計画の平成27年度見直しのなかで、LGBT等性的マイノリティの方が個人として尊重され多様性を認めあうことは、男女共同参画社会を形成していくうえで重要な視点であるとして、理解の促進や相談窓口の周知を事業内容に補足したものです。
     次に、男女共同参画推進会議に当事者を加えることについてです。この会議は、男女共同参画推進条例に基づき、区民、事業者、地域団体の皆さまに、男女共同参画の基本理念についての理解を深め、区が実施する男女共同参画推進施策に協力するとともに、その推進に努めていただく主旨で設置しているものです。したがって、当事者の方には、会議の構成員としてではなく、必要に応じて会議の場でヒアリングをさせていただきます。
     同性パートナーシップについては、性的少数者が、社会生活を送るうえで抱えるさまざまな問題に対する取組みと捉えていますが、結婚相当の関係と認める要件や、実際にどのような場面で使われて問題の解決につながるのかなど、総合的な検討が必要と考えています。いずれにしても、同性パートナーシップに対し結婚と同等の保障を行うためには、結婚制度のあり方についての十分な議論を踏まえて、国において結論を出すことが必要と考えており、条例については検討しておりません。今後、第三次男女共同参画推進計画を策定していくなかで、同性パートナーの方々も含めて性的マイノリティの方に必要な配慮や取組みを検討し、誰もが個人として尊重されるまちの実現を目指して取り組んでいきます。

    (酒井教育長) 教育委員会へのご質問にお答えします。
     LGBTへの対応についてのお尋ねです。
     第一に児童生徒への啓発についてです。平成27年4月の文部科学省通知「性同一性障害に係る児童生徒に対するきめ細かな対応の実施等について」には、当該の児童生徒へのきめ細かな対応の実施に当たっての具体的な配慮事項等が示されています。教育委員会では、本通知を踏まえ、各学校に組織的な支援を行うことや相談体制を充実することなどについて指導しているところです。児童生徒への直接的な指導については、学校生活で悩んだ体験を当事者が紹介する授業などの取り組みが一部の自治体で行われていることは承知しています。教育委員会としては、LGBTに限らず、人権教育の一環として、まずは児童生徒が心身の発達などに関する悩みや不安を担任、養護教諭、スクールカウンセラーなどに、相談しやすい体制を各校で整えることが重要と考えています。
     第二に、教職員の理解を深めることについてです。
     学校が性同一性障害等の児童生徒の心情に配慮し、適切な対応を図ることができるようにするためには、教員が研修等を通して、正しい理解と認識を深めることが重要です。新宿区では、昨年度から教員向けの人権研修の一環として、LGBTを取り上げた研修を行っています。今年度は、生活指導主任会や保健主任会等において、文部科学省の資料である「性同一性障害や性的指向・性自認に係る、児童生徒に対するきめ細やかな対応等の実施について」を活用した研修を行う予定です。また、この研修を受講した教員が、所属する学校で、文部科学省の資料を活用した校内研修等を実施することで、各校の教職員がLGBTへの理解を深める機会を作ることができるよう指導してまいります。
     第三に、「新宿区いじめ防止等のための基本方針」の未然防止に向けた取組みとしてLGBTについても項目を明記することについてのお尋ねです。
     平成26年3月に策定した「新宿区いじめ防止等のための基本方針」には、未然防止に向けた取組みの第一項目に「人権教育の充実」をかかげています。先に述べたとおり、人権教育は、LGBTへの理解を含め様々な人権課題に関わる差別意識の解消を図るものであり、いじめ等の防止につながるものです。したがって、LGBT等の個別の人権課題を「新宿区いじめ防止等のための基本方針」に明記する予定はありませんが、LGBTで悩む子どもたちは、いじめや暴力、からかいの対象になりやすいとも言われることから、指導については十分な配慮をして対応してまいります。以上で、答弁を終わります。

    区議会活動 | あべ早苗

    2016.08.08 更新

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