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    2018年第3回定例会で川村のりあき議員が代表質問を行いました

    9月20日の本会議で、川村のりあき議員が以下の項目について代表質問を行いました。

    1. 表現の自由をおかす区立公園使用基準の見直しについて
    2. ヘイトスピーチ解消にむけた取り組みについて
    3. LGBT・SOGIについて
    4. 区内4警察署への65歳以上高齢者名簿の提供と特殊詐欺対策について
    5. 災害対策について
    6. 暑さ対策について
    7. 幼児教育・保育の無償化と待機児童解消及び保育園における紙おむつの処分について
      正式な会議録ではありませんが、概要をご紹介します。

     

    (川村のりあき議員) 日本共産党区議団の川村のりあきです。2018年第3回定例会にあたり、会派を代表して区長と教育委員会に質問します。
     
     第2回定例会以降、6月18日の大阪北部地震、西日本各地を襲った「平成30年7月豪雨」、9月4日に近畿地方を中心に猛威をふるった台風21号による被害、そして9月6日未明に北海道胆振東部地方で震度7の大地震が発生し、この短い期間に大きな自然災害が相次ぎました。冒頭、亡くなられた方々のご冥福をお祈りするとともに、被災されたみな様に心からお見舞いを申し上げます。
     一方、本日20日投開票で自民党総裁選が行われています。これに名乗りを上げている安倍晋三首相は、憲法9条に自衛隊を明記する改憲案を国会に提出する時期を「秋の臨時国会」とする旨の踏み込んだ発言をしたうえ、次期総裁任期中の今後3年間で「(9条改憲に)チャレンジしたい」と改憲への執念を改めて示しました。もう一人の候補者である石破茂氏は、9条改憲では安倍氏と共通するものの、9条2項削除を主張し、緊急事態条項創設を掲げています。どちらが総裁になっても、憲法と平和が脅かされることになります。私ども日本共産党は、多くの市民や野党のみなさんとともに、改憲の策動をストップさせるために全力で闘う決意です。
     さて、安倍政権による森友・加計学園問題、自衛隊の「日報」問題、「働き方」改革のデータねつ造問題など、主権者である国民に対する重大な背信行為が発覚していますが、それに加えて、障害者雇用数を中央省庁が水増ししていた事実が明らかになりました。民間企業には、法定雇用率を下回れば納付金の徴収を課す事実上の罰則があります。民間企業に障害者雇用推進を促し指導する中央省庁が、実際と異なる数字を使って水増していたことは、障害者行政への信頼を根本から覆す裏切り行為であり、断じて許すことができません。新宿区が法定雇用率を下回っていることが都政新報で報じられていますが、来年度以降は確実に上回る対策を講じることを強く求めて、以下質問に入ります。
     
    1、「表現の自由」を侵おかす区立公園の使用基準の見直しについて

     はじめに、「表現の自由」を侵おかす区立公園の使用基準の見直しについて伺います。
     第2回定例会区議会本会議における自民党・無所属クラブと区議会公明党の代表質問に対し区長が検討を表明したのを受け、6月20日、新宿区はデモの出発地として使用できる公園をこれまでの4か所から1か所にすることを決定し、6月27日、区議会環境建設委員会に事後報告しました。区の説明によると、例年50~60件だったデモ件数が昨年度は77件に増加し、公園周辺町会及び商店会等からデモ制限の要望が寄せられたことを理由に、「デモの出発地としての使用できる公園の基準」を見直し、今後使用できる公園は周辺環境へ配慮する観点から、「住宅街」に加え、「学校、教育施設及び商店街」に近接していないものとしました。この結果、柏木公園、花園西公園、西戸山公園の3公園を指定から除外し新宿中央公園のみとなりました。これにより昨年度60件使用した3公園が8月1日からデモ集合場所として使えなくなりました。
     6月20日以降、朝日新聞の主張などをはじめ多くのマスコミが「表現の自由」を侵害する恐れを指摘されています。第二東京弁護士会は、「憲法21条の定める『表現の自由』『集会の自由』を侵害し違憲であり、『普通地方公共団体は、正当な理由がない限り、住民が公の施設を利用することを拒んではならない』と定める地方自治法第244条2項にも反し違法であることから新基準は直ちに廃止すべき」とし、東京弁護士会は、「デモ行進の自由そのものの全面的な規制であり、憲法21条の保障する『表現の自由』に反する恐れが強く直ちに改める」よう声明を出しています。区民団体や市民からも多数撤回を求める声が上がっています。区長は、2つの弁護士会の会長声明についてどのように思われますか。デモの出発地として使用できる公園を1ヵ所に制限したことは、憲法21条の「表現の自由」を侵すものとの認識はないのでしょうか、お答えください。
     次に、公園の使用目的についてです。
     そもそも公園は誰もが自由に出入りできる公の施設であり、歴史的に集会やデモ行進の集合・出発地点として用いられてきた「パブリック・フォーラム」として、表現の自由の保障を可能な限り配慮することが求められます。実際、23区の中では、12区がデモ出発地の使用制限がなく、8区は集会に使用制限がありません。都立公園は日比谷公園以外、原則デモの出発地としても、また集会利用も可能であり、表現の自由が保障されています。区長は先の定例会で「(公園のデモ出発地としての使用は)本来の使用目的ではない」と発言しましたが、新宿区立公園条例のどこにそのような規定があるのでしょうか。区長は、デモの出発地としての利用や集会利用を「本来の使用目的ではない」と何を根拠にお考えなのでしょうか、伺います。
     次に、公園の使用基準の見直しについて伺います。
     これまで新宿区立公園条例第3条1項の3号で「催しのため公園の全部又は一部を占用して使用する」場合、あらかじめ区長の許可を得なければならないとし、同条4項は、「公衆の公園の利用に支障を及ぼさないと認める場合に限り」許可を与えることができるとしています。区は、これによりデモの出発地としての使用基準を定めてきたとしています。
     1979年に使用基準が策定され、指定公園は11カ所に制限されています。2007年の見直しで、「区立公園条例の適用を受ける公園」から「都市公園法の適用を受ける公園」に、「住宅密集地にない公園」から「住宅地にない公園」に変更され、新たに公園面積が1000㎡以上、利用時間は30分にするなどの条件を変え、指定公園は新宿中央公園、柏木公園、西戸山公園、大久保公園、新宿公園の5カ所になりました。その後、ヘイトデモがさかんに行われていた大久保公園と新宿公園が、2010年、同時期に工事に入った時、区は代わりに花園西公園を指定しました。この措置は、これ以上制限をすると表現の自由に抵触するという考えがあったからではないでしょうか。お答えください。
     しかし、今回の使用基準の見直しでは、新たに「学校、教育施設及び商店街」に近接していないことを加えたことで1カ所、新宿中央公園のみとしました。しかも、これほど極端な制限をするにもかかわらず、議会には事後報告で議論の機会すら与えないというのは議会軽視ではありませんか。区長の認識をお聞かせください。
     今回の基準見直しは、新宿区公園条例第3条4項の「公衆の公園の利用に支障を及ぼさない」限り認められるはずの「デモをする権利」が奪われたことになると考えますがいかがですか。区が指定を外した3公園について、「公衆の公園の利用に支障を及ぼす」デモが行われていると判断した正当な事由とは何なのでしょうか、お答えください。
     次に、公園の近隣住民、周辺の町会・商店会への配慮についてお聞きします。
     私たち区議団は近隣住民の方々から聞き取りを行いましたが、その際、ヘイトデモは「聞くに堪えない。騒音がひどい」などを理由に規制を求められましたが、「普通のデモまで規制するのはいかがか」との声も聞かれました。やはり問題なのはヘイトデモです。区長は今回の基準の見直しについて「区長トーク」や新聞紙上などではヘイト対策だと主張されているのですから、真正面からヘイトデモ対策を行うべきです。しかし、実態は「ヘイトデモ対策を口実にした」すべてのデモを一律に規制するもので、国連がやってはならないと強調している行為です。
     区長、今回の見直しは一旦撤回し、公園周辺地域の方々の安寧と「表現の自由」が両立するよう改善策を講じるべきです。それぞれの公園の実情を踏まえ、周辺住民やデモ主催者等、広く区民の意見を聞きながら検討すべきです。そして今後必要な見直しについては、指定公園のデモ実施状況や苦情の件数・内容等、関連するデータ及び資料をすべて公開し、区議会の議論に附すことを求めるものですが、区長の見解を求めます。

    (吉住健一区長)川村議員のご質問にお答えします。
     区立公園使用基準の見直しについてのお尋ねです。
     初めに、2つの弁護士会の会長声明及び憲法第21条に対する認識についてです。
     今回の「デモの出発地として使用できる公園の基準」の見直しに当たっては、「表現の自由」をいかにして守りながら、近隣住民の生活環境を守るかということについて、法律の専門家の助言もいただきながら検討をいたしました。
     国においても、表現方法の一つであるデモ等を規制する法律制定、例えば、「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律」を議論した際にも、言論活動等自体の規制や委縮につながらないよう、慎重な審査が行われたと聞いております。今回の基準の見直しは、そうした議論なども踏まえて、世界最大の乗降客数を持つ新宿駅に近く、東京を象徴する東京都庁の至近に位置する区内最大の区立公園である新宿中央公園を、引き続き利用できることとしたことによって、表現の自由と住民の生活環境の両立できる基準といたしました。区内には、区立公園以外にも大きな都立公園があり、デモ等の活動を行うことができる環境にあると考えています。
    今回の基準見直しには、集会を禁止する意図はなく、表現、集会、結社の自由を侵すものでもありません。このため区としては、2つの弁護士会の会長声明が指摘する憲法第21条を侵すものではないと考えています。
     次に、先の定例会での「デモ出発地の使用が、公園の本来の使用目的ではない」との発言についてです。
     公園は、休息や散策、運動やレクリエーション等といった様々なアクティビティが自由に展開される場として役割を果たしています。しかしながら、物品の販売や演説などとともに、デモの出発地による公園の全部又は一部を独占的に使用する行為は、公園管理上支障を及ぼすおそれがあります。このような行為は公園利用の一形態ではありますが、公衆の公園利用を妨げない範囲において特別に認められるものであり、一般の自由な公園を使用する行為と区別して発言したものです。
     次に、これまでの「デモの出発地として使用できる公園の基準」の見直しについてです。
     平成22年当時、花園西公園をデモの出発地として使用できる公園に指定したのは、新宿公園及び大久保公園が工事で使用できなくなったことから、臨時的代替え措置として指定したものであり、表現の自由に抵触するからという考えはありませんでした。デモの出発地として使用できる公園については、新宿区の地域特性や時代の変化に則して、基準を適宜見直すことが、公園管理者の責務であると考えており、これまでも数次にわたり見直しを行ってきたところです。
     次に、「デモの出発地として使用できる公園の基準」は、新宿区立公園条例に基づく許可をする上での判断基準であり、公園管理者の裁量の範囲と考えますが、今回は大きな見直しであることから、基準を施行する前に議会へ報告させていただいたものです。
     次に、「デモをする権利」を奪うことになるのではとのご指摘についてです。
     今回の基準の見直しでは、新宿中央公園の使用を認めていることから、デモをする権利を奪うとのご指摘には当たらないものと考えています。
     次に、「公衆の公園の利用に支障を及ぼす」と判断した正当な事由についてです。
     デモの出発地として独占的に使用された場合、一般の公園利用が制限されることはもちろんのこと、公園の立地状況を踏まえた周辺環境への影響などを総合的に勘案し、今回の見直しを行ったものです。
     次に、今回の基準見直しを一旦撤回し、広く区民の意見を聞きながら、議会の議論に付すべきとのご意見についてです。
     今回の基準の見直しに当たっては、デモの実態に加え、公園周辺の状況や地元からの要望を総合的に勘案し決定したものです。現時点で基準見直しを撤回する考えはありませんが、今後も引き続き、デモの利用状況等の調査を続けていくとともに、議会並びに地域の皆様からのご意見等を伺いながら、適正な公園管理に努めてまいります。


    2、ヘイトスピーチ解消にむけた取り組みについて
    (川村議員) 次に、ヘイトスピーチ解消にむけた取り組みについて質問します。
     はじめに、この間、私どもがヘイトスピーチ解消のため実効ある対策を求めたのに対して、区は「人権擁護委員会で検討しているの意見も参考にし、区で検討していく」と答えてきましたが、これまでの検討状況についてお答えください。
     2016年5月に成立した「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律」(以下、ヘイトスピーチ解消法という)第4条2項は「地方公共団体は、本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組に関し、国との適切な役割分担を踏まえて、当該地域の実情に応じた施策を講ずるよう努めるものとする。」と定めています。
     法律に先がけた取り組みとして、大阪市は2016年1月、「ヘイトスピーチへの対処に関する条例」を制定し、川崎市は法律制定を受け、2016年5月にヘイト団体に対する公園の使用不許可処分の決定を下し、2017年11月、ヘイトスピーチ解消法に基づく「公の施設」利用許可に関するガイドラインを策定しました。どちらも地方自治体の姿勢を示す先進的な取り組みです。
     また、江戸川区は従前から公園や緑地を使用する際に、騒音などで近隣住民に迷惑をかけないように求めてきましたが、2016年8月から「ヘイトスピーチ解消法第2条に規定する『本邦外出身者に対する不当な差別的言動』を行うときには占用を許可しない」と、公園・児童遊園・広場等の占用基準に明記しました。また、今年4月施行した、区の施設予約システム「えどねっと」利用者規約の第44条「利用の不承認」に、「ヘイトスピーチ対策法第2条に規定する、『本邦外出身者に対する差別的言動を行う場合』には利用を承認しないこと」と、必要に応じて予約を取り消すことができる項目を加えました。区の担当者の話では、これ以降はヘイトスピーチデモは1件もないとのことで、禁止の姿勢を明確に打ち出したことが効力を発揮しています。また、東京都は第3回定例会に提出予定の「(仮称)東京都オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念実現のための条例」で、表現の自由に配慮しつつ、都がヘイトスピーチを許さないという姿勢を示し、都の公の施設の利用制限基準を策定する方向を示しました。
     法第4条が地方公共団体に求めていることに前向きに応えようとするこうした地方自治体の姿勢は、ヘイトスピーチデモが多い新宿区こそ真っ先に実践すべきことだったと思います。今からでも、新宿区もヘイトスピーチ解消のため、公園の占用や施設の利用不承認や予約取り消しの要件に、「ヘイトスピーチ解消法第2条に規定する『本邦外出身者に対する不当な差別的言動』を行うとき」を明記し、区の断固たる姿勢を内外に示すべきと考えますが、ご所見を伺います。
     川崎市ではヘイトスピーチの標的とされてきた社会福祉法人が、ヘイトスピーチデモを行わないよう、裁判所に仮処分を求めた申し立てについて、2016年6月2日の横浜地裁川崎支部は、ヘイトスピーチの主催者に対し、「ヘイトスピーチ解消法が定義する差別的言動は憲法13条に由来する人格権を侵害するものであり、街宣車やスピーカーなどで行われることを考慮すれば、違法性は顕著であると言え、もはや憲法の定める集会や表現の自由の保障の範囲外であることはあきらか」であるとする仮処分を決定しました。ここから読み取れるのは、明らかにヘイトスピーチが行われると判断できる場合については、「集会や表現の自由の保障の範囲外」として使用不許可の判断が十分に成り立つということです。
     川崎市のガイドラインでは施設利用の「不許可」及び「許可の取り消し」ができる要件を「不当な差別的言動の行われるおそれが客観的な事実に照らして具体的に認められる場合」の言動要件と、かつ「他の利用者に著しい迷惑をかけることが客観的な事実に照らして明白な場合」の迷惑要件と判断されるときに限ってできるとしています。しかし、ヘイトスピーチ解消法で定義されている「言動要件」に当てはまれば法律違反であり、「言動要件」だけで公の施設の利用を禁止することが可能と考えますが、区長のご所見を伺います。
     ヘイトスピーチ解消法や人種差別撤廃条約に照らし、今こそ地方自治体の責務を果たすために条例制定を行うべきです。区長の見解を求めます。東京弁護士会は、人種差別の解消へ向けた地方自治体の条例制定のため、今年6月に「人種差別撤廃モデル条例案」を公表しています。この「モデル条例案」は、人種等を理由とする差別の禁止条項を明確にし、「公の施設の利用制限」を「言動要件」で行うこと、更には「差別的行為」に対する「警告」、「命令」、命令違反に対する「過料」を科す等、制裁規定を設定することで実効性を担保するものとなっています。新宿区は、モデル条例案作成の弁護士の協力も得て、直ちに条例策定に取り組むべきと考えますが、ご所見を伺います。
     
    (吉住区長) ヘイトスピーチ解消に向けた取り組みについてのお尋ねです。
     初めに、ヘイトスピーチ解消のための対策に関する、区の検討状況についてです。
      区では、ヘイトスピーチ解消法の施行を受けて、関係課で対策についての検討を進めてきました。平成28年8月2日から、区立公園の占用許可の際に、地域住民等に危険な状況を誘発するような行為の禁止や、明らかな差し迫った危険の発生が具体的に予見される時は許可を取り消すことがある等の条件を追加し、許可証交付時に、法務省が作成した啓発チラシを添付しています。さらに、平成30年8月1日から、占用許可申請書に、ヘイトスピーチ解消法の趣旨に反することを行わない旨の許可条件への同意欄を設けました。今後も引き続き、人権擁護委員のご意見も参考にしながら、ヘイトスピーチ解消のための対策を進めてまいります。
     次に、公園の占用や施設の利用不承認及び予約取消の要件に、「ヘイトスピーチ解消法に規定する差別的言動を行う時」を明記し、区の断固たる姿勢を内外に示すべき、とのお尋ねです。
     区立公園の占用許可申請書については、地域住民等に危険な状況を誘発するような行為の禁止や、明らかな差し迫った危険の発生が具体的に予見される時は許可を取り消すことがある等の条件を追加しています。また、ヘイトスピーチ解消法の趣旨に反することを行わない旨の許可条件への同意欄も設けております。あわせて、許可証交付時に、法務省が作成した啓発チラシを添付するなどの対応を既に行っており、ヘイトスピーチは決して許さないという姿勢を貫いてまいりました。他の区施設につきましても、都が制定を進める「東京都オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念の実現を目指す条例」において定めるものとされている、公の施設の利用制限についての基準を参考にしながら、区としての基準作りの検討を進めてまいります。
     次に、ヘイトスピーチ解消法に定義される「言動要件」への違反があっただけで、公の施設の利用を禁止することが可能ではないか、とのお尋ねです。
     公の施設の使用許可については、地方自治法により、集会の目的や言論内容、団体の性格そのものを理由としての、利用不許可や不当な差別的取り扱いは許されていません。また、最高裁判所判例では、人の生命・身体・財産や公共の安全に危害が及ぶ恐れがあり、明らかな差し迫った危険が客観的事実によって具体的に予見される場合に、利用許可を取り消せるものとされています。
     公の施設の利用の制限にあたっては、地方自治法及び最高裁判所判例に沿い、不当な差別的言動とあわせて、他の利用者に著しい迷惑をかけることが客観的な事実に照らして明白な場合に、制限できるものと考えています。
     次に、ヘイトスピーチ解消法や人種差別撤廃条約に照らし、モデル条例案を作成した弁護士の協力も得て、条例制定を行うべきとのお尋ねです。
     都においては、あらゆる人がいかなる種類の差別も受けることがなく、多様性を尊重する国際都市の実現を目指すため、不当な差別的言動の解消への取り組みを含んだ「東京都オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念の実現を目指す条例」の制定が進められています。区としましては、都の制定する条例や、これに基づく公の施設の利用制限の基準も参考にしながら、検討してまいります。


    3、LGBT・SOGIについて
    (川村議員) 次に、LGBT・SOGIについて質問します。
     先の第2回定例会で「新宿区における性的マイノリテイへの配慮に関する陳情」が全会一致で採択されました。陳情採択を受け、区長部局と教育委員会では課題の整理を行っていると思いますが、どのようなことを課題と捉え、課題解決に向けてどのような取り組みをしようとしているのか、まずお答えください。
     質問の第1は、早急な課題の整理と必要な改善を行うことです。先日、同僚議員がトランスジェンダー当事者団体のみなさんの会合に参加させていただきましたが、そこで話されたのはスポーツ施設の更衣室の問題、トイレの問題、温泉などの入浴時の問題、健康診断時の対応など、社会生活上直面する問題が率直に出されていました。これだけでも、様々な課題があることが分かります。
     区政に照らして考えてみると、教育委員会では啓発含めた教育の問題から、LGBT等に関する文科省通知の児童生徒・保護者への周知をはじめ、男女混合名簿、学校現場での更衣室、健康診査、制服問題など数多くの課題があります。区長部局ではトイレ、スポーツ施設の更衣室、保養所などでの脱衣所や浴場の問題、住民票の記載方法、区営住宅の申込み資格にかかる同性パートナーの扱いなど、多岐にわたる課題があります。今述べたことを教育委員会と区長は課題として捉えているでしょうか。当事者団体・個人の意見も聞き、早急に課題の洗い出しと解決に向けた方針を確立すべきと考えますが、いかがでしょうか。
     質問の第2は、区長の姿勢についてです。昨年6月、アエラの編集部が、開催まで3年余となった東京オリンピック・パラリンピックに向け五輪憲章に「性的指向」による差別の禁止が謳われ、LGBT対応も試されているとして、23区の区長にアンケート調査を行っています。同性婚に賛成は渋谷、世田谷、足立の3区長、この後8月20日から同性パートナーシップ宣誓書の受付を始めた中野区の区長も新たに加わったものと思います。新宿区長は同性婚について賛否の態度は明らかにせず、「性別にかかわらず多様な生き方があるということは理解しています。社会制度としては現行憲法の下では『婚姻は両性の合意のみに基づいて成立し』と定められている現状があります」と答え、「同性パートナーシップ制度についても導入の検討はしていません」と答えていますが、区長は同姓婚を認めるべき、認めるべきでない、どちらの立場なのかお聞きします。それにも答えず、同性パートナーシップ制度についても検討すらしないとしたら、オリンピック憲章に対して区としての対応は一切検討していないことを示していると言われても仕方ないと思いますがいかがでしょうか。100を超える国の人々が暮らす新宿区がどうあるべきか、2020年のオリンピック・パラリンピック開会式・閉会式が行われる新国立競技場の立地区だからこそ同性パートナーシップ制度の導入を行うべきと思いますがいかがですか。お答えください。

    (酒井敏夫教育長) 教育委員会へのご質問にお答えします。
      はじめに、「新宿区における性的マイノリティへの配慮に関する陳情」を受けた課題の整理と、課題解決のための取組についてのお尋ねです。
      教育委員会では、平成27年度の文部科学省通知を踏まえ、当該の児童・生徒へのきめ細かな対応など具体的な配慮事項等について学校への周知を行ってまいりました。
     また、本通知には、教育の中でLGBT・SOGIについて取り扱う際には「学校全体で共通理解を図る」こととされていることから、平成28年度以降、教員を対象とした研修を毎年実施しています。今年度は、全会一致の本陳情採択を受け、早急に人権尊重教育推進委員会で扱うべき課題について整理するとともに、当事者団体の方を招聘し、意見交換を行ったところです。
      学校現場ではLGBT・SOGIについて、他の人権課題と同様に日常の生活のあらゆる場面で粘り強く理解と啓発に努めることが肝要であり、当事者である児童・生徒の心情を深く考え、教員が適切に対応することが課題です。そこで、教育委員会では、人権尊重教育推進委員会において、指導の際に留意すべき点や発達段階に応じた実例集をリーフレットとしてまとめ、啓発ならびに新宿区内の全幼稚園・子ども園、小中特別支援学校へと周知を行うべく準備を進めています。
     次に、教育委員会の見解及び課題の洗い出しと解決に向けた方針を確立することについてのお尋ねです。
     ご指摘の児童・生徒、保護者への周知をはじめ、男女混合名簿、更衣室のあり方等については、教育委員会でも課題として捉えています。人権尊重教育推進委員会では、トイレや更衣室の問題など施設面の課題だけではなく、「相談を安心してできる学校環境づくり」及び「保護者への啓発」の具体的な方法について実際に学んでいるところです。今後は、人権尊重教育推進委員会において取りまとめた実例に加え、保護者等への周知等、区立学校において取り組むべき事項について方針をまとめていく予定です。学校が児童・生徒の心情に配慮し、よき理解者であり味方でもある大人として、適切な対応を図ることができるよう、学校の取組を支援してまいります。

    (吉住区長) LGBT・SOGIについてのお尋ねです。
     はじめに、LGBT・SOGIについての課題と課題解決に向けた取り組みについてです。
      平成30年第2回区議会定例会において「新宿区における性的マイノリティへの配慮に関する陳情」が採択されました。この陳情の要旨は、「新宿区における性的マイノリティへの対応状況の確認と課題の整理の検討」となっています。そのため、現在、区では、窓口対応や行政サービスの実施にあたり、性的マイノリティに関して寄せられた相談、要望、苦情、意見や、それらへの対応状況、今後想定される課題について、全庁的な調査を実施しているところです。この調査結果を踏まえ、課題を整理してまいります。
      次に、トイレ、スポーツ施設の更衣室、保養所などでの脱衣所や浴場の問題、住民票の記載方法、区営住宅の申込み資格にかかる同性パートナーの扱いなどを、課題として捉えているかについてです。
     今回課題としてご指摘いただいた事項について、すでにご相談やご要望を受けていることは認識しています。そのため、性的マイノリティについての職員研修を実施するほか、ご要望等への対応策、施設における配慮の実例などを全庁的に共有し、例えばスポーツ施設の男女別更衣室の利用が困難な方には個別に着替えられる場所をご案内するなど、性的マイノリティに関する多様な事例に対して、適切な対応に努めています。
     次に、当事者団体・個人の意見を聞き、早急に課題の洗い出しと解決に向けた方針を確立すべきとのお尋ねです。
     区では、性の多様性の理解促進のために、職員向け研修や、区民向けの講座・イベントなどを、当事者団体の方々と協働で実施し、当事者の活動を知りご意見を聞く機会を設けています。区における課題につきましては、現在実施している性的マイノリティに関しての調査結果を踏まえ、整理してまいります。
     次に、同性婚に対する考え方についてです。
     婚姻については、法に定められているため、区長が認否するものではないと考えています。
     次に、オリンピック憲章に対する区の対応についてです。
     オリンピック憲章においては、「人種」や「肌の色」など差別を禁止するさまざまな理由のなかに「性別」や「性的指向」も含まれています。一方、新宿区男女共同参画推進条例が目指しているのは、性別にかかわらず、すべての人が個人として尊重され、差別的取扱いを受けることのない社会の実現です。性的マイノリティの方も、人としてその人権は尊重されるものであり、不当な差別を受けることがあってはなりません。これは、差別撤廃を目指す国際的基準であるオリンピック憲章の目的と、同じ方向であると考えています。
     次に、同性パートナーシップ制度の導入についてです。
     同性パートナーシップ制度については、その関係にある性的マイノリティの方が、社会生活を送るうえで抱えるさまざまな問題に対する取り組みと捉えていますが、婚姻相当の関係と認める要件や、実際にどのような場面で使われて問題の解決につながるのかなど、総合的な検討が必要であると考えています。いずれにしても、同性パートナーシップに対し婚姻と同等の保障を行うためには、婚姻制度のあり方について十分な議論を踏まえ、国において結論を出すことが必要と考えているため、制度の導入についての検討はしていません。


    4、区内4警察署への65歳以上高齢者名簿の提供と特殊詐欺対策について
    (川村議員) 次に、区内4警察署への65歳以上高齢者名簿の提供と特殊詐欺対策について伺います。
     新宿区は、8月23日、新宿四谷牛込戸塚の新宿区内4警察署と「特殊詐欺根絶対策実施に必要な情報の提供に関する協定書」を締結しました。私ども区議団は、特殊詐欺根絶には打つべき対策は他にあり、6万7000人分もの個人情報を危険に晒す65歳以上高齢者名簿の提供は行うべきではないとして社民党新宿区議団とともに、6月26日、8月16日と区長に申し入れてきました。これら申し入れや、情報公開・個人情報審議会(以下「審議会」)、防災等安全対策特別委員会等で私どもの考えは示してきたところですが、現時点に立ち以下何点か質問します。
     質問の第1は、個人情報の取り扱いについてです。新宿区は、「新宿区個人情報保護条例」は、の第11条で実施機関(区等)内部における個人情報の目的外使用を制限したうえで、第12条第1項で「実施機関は、保有個人情報を区の機関以外のものに提供してはならない。」と定め、外部提供を原則禁止しています。その上で例外として第12条第2項で「(1)本人同意があるとき、又は本人に提供するとき。(2)法令などに定めがあるとき。(3)人の生命、身体又は財産の保護のために緊急に必要があるとき。(4)前3号に掲げるもののほか、審議会の意見を聴いて、実施機関が特に必要であると認めたとき。」のいずれかに該当するときは提供ができるとしています。そこで区長に伺います。区は今回の名簿提供の根拠はこの4号にあたるとしています。しかしこの4号は例外中の例外として外部提供できる事例であり、6万7000人分もの大量の個人情報を外部提供する根拠にすることは無理があると考えますが、いかがですか。外部提供を原則禁止にしている条例の趣旨をふまえれば本人同意を得るのが当然と考えますが、そうした判断にならなかったのはなぜか、ご所見を伺います。今回の高齢者名簿提供は本人同意を得ておらず、条例の趣旨に基づいていません。改めて区内4警察署への65歳以上高齢者名簿の外部提供は中止を求めます。ご所見を伺います。
     次に、東京弁護士会、東京第二弁護士会の声明についてです。8月22日、第二東京弁護士会が会長声明を出し、続いて東京弁護士会は、9月7日「自治体による警察署に対する高齢者の個人情報提供に抗議する会長声明」を出しました。名簿提供は違法として中止を求める厳しいものです。憲法13条によるプライバシー権を侵害し違憲だということ、施策の目的を達成する手段としては不適当であり、本人の申し出による方式をとるべきであること、警察への名簿提供による漏洩の可能性について指摘をしています。これほどたて続けに、一地方自治体に対し、違憲性や違法性の指摘がされたことはまずありません。私は、これら指摘について真摯に受け止める必要があるかと思いますが、これら声明に対する見解と、指摘事項への区長のご所見を伺います。
     実際、約6万7000人もの多数の個人情報が本人同意なく提供されたことは新宿区で例がなく、対象者はほぼ同じで、同時期に「審議会」へ諮問された高齢者の見守りキーホルダーの事業は手上げ方式であることと比較しても大きな違いがあります。しかも、現職の警察官による故意の流出も含め警察の保有する個人情報が流出した事例は多数あり、一度外部提供した情報が何らかの状況で流出する懸念は払拭できません。これら懸念に対する区長のご所見をお聞かせください。
     質問の第2は、特殊詐欺対策についてです。高齢者名簿の提供では、特殊詐欺防止はできません。実例として野田市の例を挙げてきましたが、警察からの働きかけにより高齢者の情報提供を行ったところ、52名から利用停止請求、12名から異議申し立てが出され、2016年「公益上特に必要とは認められない」との情報公開・個人情報保護審査会の答申を受け事業を中止しました。「審査会」答申では、偽電話詐欺などの犯罪被害や交通事故の防止対策では、事例の広報活動など、名簿提供以外に有効な方法があると指摘し、「個人情報保護より優先させるべき必要性が高いとは認められない」と判断を改め、「検討が足りなかった点を反省する」としました。狛江市では、2014年から60歳以上11,000人の高齢者の情報提供を行いました。当初1年半で訪問するとしていましたが、1割の対象者を残し4年経過し事業を終了しましたが、特殊詐欺が減ったのは初めの1年のみで、その後件数はむしろ激増しています。23区では、世田谷区が2007年から11年間にわたって区内4警察に名簿提供を行っていますが、特殊詐欺の件数は増えています。また墨田区は2016年9月23日から3年間の名簿提供中ですが、特殊詐欺は増えています。ただ、担当者のお話で印象的だったのは、あらゆる取り組みへの努力と同時に「『自動通話録音機』を設置した世帯は1件も被害が発生しておらず設置を進めたい」とのことでした。
     決定的なのは「自動通話録音機」設置であって警察への名簿提供ではないことは明白です。千代田区では、介護保険料の通知と一緒に案内を行い、6月1日から「自動通話録音機」の申し込みを開始したところ、308件の申し込みがありました。新宿区の高齢者人口で割り返すと2400件以上になります。所管は在宅支援課で警察への名簿提供は行っていません。そこで区長に伺います。私はむしろ「自動通話録音機」の設置希望を募り、希望する全世帯に「自動通話録音機」を設置することこそ特殊詐欺根絶を実現する道と考えますがいかがでしょうか。また、「自動通話録音機」の貸出窓口を危機管理課と警察署だけにするのではなく、消費生活センター、特別出張所、高齢者総合相談センター、社会福祉協議会、シルバー人材センターなどに思い切って広げるべきと考えますがいかがでしょうか。
     特殊詐欺は日々発生しており、巧妙化しています。直近では、はがきや携帯電話を使った特殊詐欺で被害が発生していますが、これは固定電話の対策だけでは防げません。1年かけて警察が高齢者訪問するとはむしろ悠長ともいえるのではないでしょうか。特殊詐欺被害を防ぐには、多くの高齢者に素早く情報提供を行う必要があり、新宿区役所内の「悪質商法被害者防止ネットワーク」に危機管理課が参加するなどの庁内の連携の強化、24時間対応の「振り込み詐欺被害防止専用電話」の設置、更には町会・自治会や民生委員の方々にご協力頂くと同時に、広報しんじゅく、区掲示板や「ぬくもりだより」での広報や、いわゆる青パト、広報車、清掃車にステッカーを貼る等、今ある資源をフル活用して取り組むべきと考えます。ご所見を伺います。

    (吉住区長) 区内4警察署への65歳以上高齢者名簿の提供と特殊詐欺対策についてのお尋ねです。
     はじめに、個人情報保護条例第12条第2項第4号を根拠として個人情報を外部提供するのは、無理があるとのことです。
     御指摘の新宿区個人情報保護条例第12条第2項第4号では、審議会の意見を聴いて、実施機関が特に必要があると認めた時に保有個人情報を外部提供できると規定しています。今回の外部提供については、区内における特殊詐欺件数の増加や被害の深刻化、発生状況等を踏まえ、区が提供する名簿に基づいて警察と連携して取り組むことにより非常に大きな効果が期待できることから、必要であると判断しました。
     次に、本人同意を得ることとしない理由についてのお尋ねです。
     本事業は、高齢者からの自主的な申請に基いて自動通話録音機の貸出しを行っていた昨年度の事業から大きく一歩踏み出し、日頃行政との接点が希薄な高齢者に対しても積極的に自動通話録音機を貸し出すことで特殊詐欺被害を根絶しようとするものです。特殊詐欺被害に遭われた人の多くは、「自分は騙されない」あるいは他人事と思い込んで対策をしていない高齢者や特殊詐欺対策に対して関心が薄い高齢者であり、本人同意を得て実施することとした場合には、このような高齢者からの申出が期待できません。その結果、防犯意識の高い高齢者のみが対象となり、特殊詐欺の根絶を図ることが困難であると判断したことから、個人情報の外部提供を希望しない人に申し出てもらうこととしたものです。
     次に、65歳以上の高齢者名簿の外部提供の中止を求めるとのお尋ねです。
     区内においては、犯罪全体の件数が減少傾向にある一方で、振り込め詐欺を始めとする特殊詐欺が増加傾向に転じています。また、被害者の多くは、特殊詐欺に対して関心が薄い方や自分は騙されないと思っている方であり、特殊詐欺を根絶するためには、このような方に効果的に注意喚起を行い、自動通話録音機を貸出していく必要があります。警察は、特殊詐欺被害に遭われた人の声を直接聴き、特殊詐欺被害の様々な手口を把握していることから、警察官が個別に訪問をして、高齢者に「自分自身も特殊詐欺の被害者になりうる」ということを分かりやすく丁寧に説明することにより、より高い事業効果が期待できます。こうしたことから、区と警察が一体となって、本事業を推進していく必要があると考えています。個人情報の保護に対しては、万全の体制を図りつつ、本事業を進めてまいります。
     次に、弁護士会の声明に対する見解と指摘事項に対する所見についてのお尋ねです。
     本事業では、日頃行政との接点が希薄な高齢者に対しても直接啓発活動を行うために、全高齢者に郵送して個人情報の外部提供を停止する意思を確認しています。また、特殊詐欺被害防止のための戸別訪問を行う目的以外には名簿を使用しないことや名簿を複写しないことなどを義務付けた協定書を結ぶなどしており、両弁護士会が声明で指摘している内容には当たらないと考えています。
     次に、個人情報流出の懸念についてのお尋ねです。
     警察では、東京都個人情報の保護に関する条例に基づき適正に個人情報を取り扱っています。さらに、本事業においては、個人情報保護の万全を図るために、個人情報を紙で提供し、その名簿を複写しないことや庁舎外に持ち出さないこと、情報管理責任者を定め鍵の掛かるロッカーで保管すること、名簿を閲覧できる者を限定することなどを義務付けた協定書を結んでいます。また、警察おける情報管理責任者から同内容について、誓約書の提出を受けているほか、区が毎月、警察における名簿の保管状況などを確認し、個人情報保護の万全を図っていくこととしており、個人情報の流出はないと考えています。
     次に、自動通話録音機を希望する全世帯に設置し、貸出窓口を広げるべきではないかとのお尋ねです。
     自動通話録音機は、電話を掛けて来た人に対して警告メッセージを発し、自動的に通話を録音するものであり、他の自治体を見ても特殊詐欺被害防止に大きな効果を発揮しているものです。区では、従来から自動通話録音機を希望する世帯に貸出す事業に取り組んでまいりました。本事業を契機として、防犯意識の高い高齢者だけではなく、日頃行政との接点が希薄な高齢者の特殊詐欺に対する関心を高め、自動通話録音機の貸出しを促進していきたいと考えています。また、特別出張所、高齢者総合相談センター、社会福祉協議会などでも高齢者からの自動通話録音機の貸出し要望があれば、危機管理課に取り次げるような体制を取っているところです。
     次に、多くの高齢者に素早く情報提供するほか今ある資源をフル活用すべきではないかとのお尋ねです。
     区内においては、高齢者をターゲットとした振り込め詐欺や還付金詐欺のほか、はがきやインターネットを使い、納められていない料金があるいった文書等を送り付け、現金を騙し取る、架空請求詐欺と呼ばれる特殊詐欺も発生しているところです。これまでも広報しんじゅくやぬくもりだより、ホームページ、高齢者の集まるイベントでの周知・広報活動を行ってきたところですが、さらに今後は、24時間警察に相談することができる「#9110」の区民への周知を図るなど、様々な機会を捉えて、広報・啓発活動を強化し、特殊詐欺被害ゼロを目指してまいります。


    5、災害対策について
    (川村議員) 次に、災害対策について質問します。
     質問の第1は、地震対策についてです。
     1つ目の質問は、ブロック塀等の安全対策についてです。最大震度6弱を記録した大阪北部地震で、ブロック塀が倒壊して通学途上の児童と80才の男性が死亡する被害が発生し、文部科学省と国土交通省が通達を出し、新宿区もこの間、区内のブロック塀等の緊急点検調査を実施しました。今回は、396の区有施設、区立小・中学校の通学路沿い、道路沿いのブロック塀等について、目視等による緊急点検を実施し、緊急対応が必要な教育・子ども関連施設のブロック塀等の安全対策を講じ、一般民有地のブロック塀等の安全対策のために除去費の助成を拡充したことは評価するものです。その上で、次のことを要望して質問します。
     今回の調査後に、戸塚第三小学校正門前の民家のブロック塀が傾き、ヒビ割れがあって危険だとして、区が所有者の了解を得て除却工事をしたと聞きました。これは、児童の安全を第一に考えた迅速で実効性のある対処だと考えます。今回の調査で、区立小・中学校の通学路沿いで20箇所、一般の交通に供する道路沿いで76箇所が、劣化や損傷が著しいので、所有者等に個別に安全化指導を実施中と報告されています。この劣化・損傷がひどくて危険なところは、戸塚第三小前のケースのように、所有者の了解をもらって、区が除去工事を行えば、安全化対策が迅速かつ確実に進むと考えます。幸い除去費用の助成が拡充され、経費がほぼまかなえる額と説明されていますから、所有者の自己負担をめぐって後々トラブルになる懸念もないものと思います。区が所有者の了解を得て業者に発注する方法で確実な除去を進めるべきと考えますが、いかがですか。
     また、ブロック塀等の除去工事を地元業者が行えば、区内業者の仕事確保につながるとともに、区の制度を区民に周知して活用を促すためにも役立ちます。区内の関連業者に対して、区の除去費用の助成拡充など制度をよく説明し、業者からもブロック塀等の除去を区民に働きかけていただくようにすべきと考えますが、区長のご所見をうかがいます。
     2つ目の質問は、電源対策です。北海道胆振東部地震では、北海道全域が停電するブラックアウトに陥り、市民生活全般が大きな打撃を被りました。東京でブラックアウトが起こらない保証はなく、今回のケースから区として教訓化すべきことがあると思います。まず、新宿区の防災計画上、ブラックアウトになることを想定した対策となっているのかうかがいます。初動段階で特に、生後間もない子どもの命が一時危険になるなどして、電源確保が生命の維持に直結することを見せつけられました。区内には大学病院をはじめとして医療機関が多数ありますが、非常用電源の確保は万全でしょうか。電源がなくなるとテレビで災害情報が見られません。スマートフォンやタブレットなどで遠隔地から情報を送るように呼びかけられていましたが、ここで課題となったのが電源確保です。区が斡旋する備蓄品のリストに手回しの発電機能付き機器は掲載されていますが、現在は太陽光で充電できる機器など進化しています。モバイル電源を各家庭の備蓄品に加えるよう広報するとともに、区が斡旋する備蓄品を充実させるべきと考えますが、いかがでしょうか。また区としてもモバイル電源を一定程度確保しておくなど、その他、今回の北海道地震から区として教訓化し、計画等に反映させるべき事柄があれば、お示しください。
     質問の第2は、災害時の避難所となる小中学校の体育館、武道場のエアコン設置についてです。
     区立小中学校の体育館は、建替えを行った中学校3校と小学校2校以外、エアコンは未設置です。小学校の体育館は放課後子ども広場や「ひろばプラス」でも活用され8月も開設日23日間に対し体育館にエアコンが付いている四谷小では22日、愛日小では20日と毎日のように使われている一方、エアコンが付いていない学校は平均1ケタの日数です。中学校では部活動で真夏でも体育館を使用しており、空調化の対策は急がれます。更に、地震や水害など災害時の避難所になることを考えると、この現状は放置できません。
     台東区は、2015年度から5カ年計画で大規模改修のある学校は同時に体育館の空調化も行い、大規模改修がない学校も年次計画で順次実施しています。通常のエアコンを平均で14台、破損しないようエアコンガードも付け、1校当たり1500万円~2000万円の予算で設置。来年度で終了とのことです。現在、中央区、千代田区、台東区、文京区などで体育館の空調化は進んできています。新宿の区立学校で残るは体育館34校、武道場5校です。学校現場からもエアコン設置を求める意見は出されていると思いますが、区教育委員会と設置者である区長は、新宿区として国の予算の拡充と都区財政調整などを要求することと同時に、エアコン未設置の体育館・武道場には一刻も早く設置すべきです。
     これらの実現には一定の予算が必要ですが、2017年度決算でも実質単年度収支は40億円の黒字であり5年連続黒字で、基金残高も469億円と4年連続増加しており、財政力は充分にあると考えます。以上を踏まえ、答弁願います。

    (吉住区長) 次に、劣化や損傷が著しいブロック塀等について、区が業者に発注する方法で除去することについてのお尋ねです。
     ブロック塀等を適正かつ安全に維持管理することは、所有者等の責任において行うべきものと認識しています。ご指摘のケースは、ブロック塀が小学校正門前で多数の児童が通行する通学路に面し、擁壁上の高い位置にあるとともに、専門家による点検調査でも、放置できない危険な状態であるとの見解が示されたことから、緊急性が高いため、管理者の同意を得て区が、除去したものです。
    劣化・損傷が著しいものについては、点検調査のなかで、すみやかに、所有者等に対して、助成制度を活用して除去してもらうよう安全化指導を行っています。現時点で、区が除去する状況にあるものはありませんが、今後、緊急を要することなどが予測される場合には、法令等を踏まえながら適切に対応してまいります。
     次に、区内の関連業者への助成制度の説明と区民への働きかけについてです。
     区は、大阪府北部地震での被害を踏まえ、道路沿いのブロック塀等の除去助成について、助成単価を増額するとともに、上限額を引き上げるなどの拡充を図りました。工事に係わる関連業者の様々な業務の場を通じて、助成制度が所有者等に周知されることは、安全が確認できないブロック塀等の除去を促進するうえで、効果的であると認識しています。このため、日々、所有者等から工事の相談などを受けている区内の建設業者で構成される新宿区住宅リフォーム協議会や、安全安心・建築なんでも相談会を区と協働で実施している東京都建築士事務所協会新宿支部などの関連団体に対し、助成制度のパンフレットや拡充内容のわかりやすいチラシを用いて、情報提供や説明等を行っています。今後も、関連団体と情報提供や意見交換を図るなど関係を強化し、ブロック塀等の除去を促進してまいります。
     次に、電源対策についてです。
     9月6日に発生した北海道胆振東部地震では、土砂崩れや建物倒壊、液状化による道路陥没に加え、ブラックアウトと呼ばれる大規模な停電が北海道全域で発生しました。区では、首都直下地震発生の切迫性が指摘される中、災害時の電力供給について、日頃から東京電力としっかりと連携を図り体制整備を行っています。区の地域防災計画においても、東京電力は、災害予防対策として、電気設備の耐震性能を確保しているとしています。また、東京電力への聞き取りでは、火力・水力・太陽光発電所を各地に整備するとともに、複数の送電ルートや他の電力会社との協定により、ブラックアウトを発生させない対策を講じていることを確認しています。また、区内には、大学病院をはじめとする7か所の災害拠点病院と4か所の災害拠点連携病院があります。これらの病院は、都の要綱により、自家発電設備の設置が義務付けられており、非常用電源は確保されています。区民へのモバイル電源については、防災ハンドブックで紹介するほか、地域の防災勉強会、防災訓練、防災イベント等、様々な機会を捉えて、携帯用充電器の備蓄の重要性を説明しています。今後も、効果的な広報活動や出前講座などを通して、備蓄の推進を図ってまいります。また、防災用品のあっせんについては、毎年、見直しを行っていることから、今後、災害時に役立つ用品について、十分に検討していきます。さらに、スマホが生活に欠かせない機器となっていることを踏まえ、第一次実行計画で乾電池式充電器を各避難所に配備することとしています。最後に、区民の生命・財産を守るためには、災害の経験を十分に活かすことが重要であることから、国による北海道地震の報告等を、しっかりと検証し、区の防災対策に反映してまいります。
     次に、学校体育館・武道場への空調設備の整備についてです。
     今夏は全国的に経験のない猛暑となり、地球温暖化等が原因と見られる一連の異常気象は今後も続くものと予想されています。こうした状況を踏まえ、学校体育館については、児童・生徒の安全な教育環境の実現や、災害時の避難所としての機能向上のため、空調設備の整備は必要なものと認識しています。まずは、体育館で全校給食を実施している牛込第一中学校体育館の空調整備を進めるべきと考えており、他の学校についても、各学校の設備や体育館などの立地条件等を踏まえ、空調設備の整備の方法等について、教育委員会と十分調整してまいります。
     また、空調整備に係る財源については、国や都の補助金等の活用を視野に入れながら進めていきます。

    (酒井教育長) 教育委員会へのご質問にお答えします。
    小中学校の体育館、武道場のエアコン設置についてのお尋ねです。
    これまで教育委員会では、既存体育館へのエアコン設置について、建物の構造上、十分な空調効率が得られないこと等から建替え時の設置を方針としてきましたが、今夏の猛暑を受け、児童・生徒の安全な教育環境の実現、災害時の避難所としての機能向上のために、まず、8月に先行してエアコン設置に関する調査を実施した牛込第一中学校体育館へのエアコン設置を進めるとともに、各学校の設備等を調査し、武道場を含めた学校体育館へのエアコン設置方法等について検討を進めてまいります。


    6、暑さ対策について
    (川村議員) 次に暑さ対策について質問します。
     今年夏の暑さは、気象庁が「災害と認識」するほどの酷暑で、新宿区内でも7月23日に39℃を記録し、7・8月の真夏日は34日、猛暑日も9日あり、新宿区内で熱中症による救急搬送は9月9日までに261人、東京都監察医務院の速報値によると熱中症で亡くなった方は7人もありました。私たち区議団は8月7日、「酷暑から区民の命と健康を守るための緊急申し入れ」を行い、全庁上げての総点検など6項目を要望しましたが、区長は、この異常な暑さについてどのように認識されていますか。私たちが申入れた項目についてどのように検討したのか、また具体的にどのような対策を実施したのかお聞きし、以下、具体的に質問します。
     質問の第1は、生活保護世帯への支援策についてです。この夏、私たちが知っているだけでも生活保護の方が2人熱中症で亡くなっています。厚生労働省は6月27日、今年4月1日以降に生活保護の受給を開始した世帯や被保護世帯で転居した場合などに5万円を限度に一時扶助によるエアコン等の購入・設置を行うことができるとする通知をしました。しかし、今回の国の対策はあまりにも対象が狭く、新宿区では対象25世帯のうち活用したのは16世帯と聞いています。
     区の生活保護世帯のエアコン設置状況は、昨年度の目視調査によると約9割で、居宅の生保世帯は約7400世帯ですから実に740世帯にエアコン等がないことになります。今年度は、社会福祉協議会の貸付制度を活用したエアコン購入等が前年度に比べ伸びており、8月末時点で生活福祉資金と応急小口資金あわせて15件、エアコン購入額の平均は6万3千円となっています。そのほとんどが生活保護世帯です。国が対象としない世帯でも必要に迫られ借金をしていること、金額も5万円では足りていないのが実態です。まず区長は、国に対しエアコンのないすべての生保世帯を対象にすること、金額を実態にあわせて引き上げることを求めるべきと考えますが、いかがでしょうか。
     質問の第2は、区独自のエアコン等設置・購入支援についてです。荒川区では8月7日、「酷暑から命を守る緊急対策」として、自宅にエアコンが設置されていない65歳以上の高齢者のみ世帯や障害者もしくは介護度4以上の方、就学前の子どものいる世帯に、冷房機器を7月24日~8月31日までに購入・設置した場合、上限5万円までの助成を行いました。国の制度の対象外となる生保世帯を含め、300世帯を目標に取り組み、8月24日時点で高齢者及び障害者等の113世帯、9月10日時点で就学前の子どものいる4世帯に助成され、喜ばれています。
     新宿区も「区民の命と健康を守る」という立場から、荒川区の事業を参考に来年以降の夏の対策として今から独自の助成制度を実施すべきではないでしょうか。その際、実績を踏まえた助成額の上限を7万円とし、社協の貸付事業を広く周知して区の独自事業と併用して活用できるようにすべきです。エアコンがあっても電気代が心配で使用していない方もいることから、生保世帯には電気代相当の夏季手当支給と、低所得者への電気代助成を行うべきと考えますが、区長の見解をお聞きします。
     質問の第3は、区営住宅へのエアコン設置についてです。先週の環境建設委員会で、特定住宅の入居推進対策として、民間賃貸住宅では当たり前になっているエアコンとトイレのウォッシュレット化を区の予算で実施するという報告がありました。公平性の観点からも少なくとも命に関わるエアコン設置は区営住宅を含めた全ての区立住宅で行うべきではないでしょうか。お答えください。
     
    (吉住区長) 暑さ対策についてのお尋ねです。
     はじめに、この異常な暑さについての認識についてです。
     今年の東京都の夏は、梅雨明けが史上初となる6月中であったことや、猛暑日も非常に暑かった平成7年と並ぶなど、まさしく危険な暑さであったと認識しています。
     「酷暑から区民の命と健康を守るための緊急申し入れ」は関する普及啓発を、例年以上に実施していくことを決定いたしました。更に、区民が対象の行事において、塩あめを配布しながら注意喚起をするなど、可能な対応を迅速に行ってまいりました。申入れをいただいた項目についても、関係課長による連絡会議を開催する中で、情報の共有化等を図ってまいりました。
     次に、生活保護世帯への支援策についてのお尋ねです。
     区では、生活保護世帯に対し、冷房機器購入費用を一時扶助として支給できるよう、平成26年度から都を通じて国に要望を行っています。今回の通知により、区の要望が一部実現できたものと評価しています。冷房機器を必要とする世帯は、漏れなく支給の対象とするよう、引き続き要望してまいります。金額の引き上げを求めることについては、今回の実績等を踏まえ、判断してまいります。
     次に、生活保護世帯に対する夏季手当の支給を区独自で行うことについてのお尋ねです。
     区では、夏季の特別な需要に対応するため、生活保護費に夏季加算を新設するよう、平成20年度から、都を通じて国に要望しており、今後も継続してまいります。したがって、生活保護世帯に対し、電気代相当の夏季手当の支給を区独自で行うことについては、考えておりません。
     次に、エアコン等の設置・購入支援及び電気代の助成についてのお尋ねです。
     酷暑への対策として、荒川区ではエアコンの設置・購入費用の助成を行ったことは承知しています。区では、暑さを感じにくいと言われる高齢者の熱中症被害を懸念し、日頃、高齢者宅を訪問している区のケースワーカーや高齢者総合相談センターの相談員への聞き取りを行いましたが、クーラーを設置していない方は少数であるうえ、購入を勧めても、体に悪いから、又はエアコンがなくても大丈夫との理由で設置を拒むケースが多いとのことでした。一方で、エアコンを設置していても、適切に使用されていなかったり、エアコンの冷気を嫌い使用していない方は比較的多いという実態も把握できました。
     この危険な暑さの中での、こうした実態を踏まえ、今後は、子育て世帯や障害者も含め、エアコン等の使用をより一層促すとともに、適切に使用できていない方に対しては、個別に丁寧な対応を、粘り強く続けてまいります。
     そのため、エアコン等の設置・購入支援及び電気代の助成を実施することは考えていません。
     次に、区営住宅等へのエアコン設置についてのお尋ねです。
     区立住宅における熱中症予防策については、エアコンの有無に関わらず、平成19年度から高齢者のみ世帯や高齢な障害者世帯を対象に、エアコンや扇風機等の適切な利用や、こまめな水分補給等の注意喚起を行っています。ご指摘の特定住宅については、主に借上げ住宅の入居促進策として、5年間の定期使用許可であることや、不動産業団体からの民間賃貸住宅の現状を踏まえた提言等を考慮し、区がエアコン等を設置するものです。このため、他の区立住宅に設置することは考えておりませんが、今後も引き続き、区立住宅における熱中症の予防に努めてまいります。
    (酒井教育長) 教育委員会へのご質問にお答えします。
     8月7日にいただいた「酷暑からの区民の命と健康を守るための緊急申し入れ」における、熱中症計の区立学校への設置と私立幼稚園への設置支援についてのお尋ねです。
     8月7日時点で、すでに多くの学校では日射や照り返しによる輻射熱も考慮出来る熱中症計を活用し、教育活動における熱中症対策を実施していましたが、一部学校では温湿度計を利用していたため、教育委員会が熱中症計を購入し、該当校に配付を行うとともに熱中症計の利用を勧奨しました。また、私立幼稚園に対しては、すでに熱中症計の購入など私立幼稚園園児の健康管理に関する費用の助成を実施しており、園児の熱中症事故防止について周知するとともに補助金の活用をお願いしているところです。


    7、幼児教育・保育の無償化と待機児童解消、及び、保育園における紙おむつの処分について
    (川村議員) 次に、幼児教育・保育の無償化と待機児童解消、及び、保育園における紙おむつの処分について質問します。
     最初に、幼児教育・保育の無償化と待機児童解消についてです。国は、2019年10月からの幼児教育・保育の無償化を盛り込んだ来年度予算の概算要求を発表しました。そもそも日本の乳幼児教育予算はOECD諸国平均の半分しかなく、教育幼児教育・保育の無償化についてはもっと早くに実現されるべきでしたが、安倍首相は消費税の増税と引き替えで実施を先送りしていました。いよいよ実施1年前となりましたが、待機児童解消と保育の質の確保が置き去りではないかという声や、国が無償化の対象外としている中に食材費が示されていることから、給食が保育と切り離され保護者負担にされるのではないかという心配など意見があります。
     幼児教育・保育の無償化について今年7月11日、全国市長会が「子どもたちのための無償化実現に向けた緊急決議」を持って国に要望活動をしていますが、財源については「…国の責任において必要な財源を確保することとし、消費税・地方消費税率10%への引上げを確実に行うこと。」などとしています。本来、無償化は消費税増税如何に関わらず実現すべきですが、区長は来年10月の消費税増税は必要とお考えですか。来年10月の増税は生活実態を見ればできないと思いますが、区長は消費税増税がなされない場合は無償化もすべきでないとお考えですか。消費税増税に頼らず、食材費も含めた無償化で保護者負担がゼロとなるよう国に求め、保育士の抜本的な処遇改善等保育の質の確保についても更に強く要望すべきと考えますが、いかがでしょうか。
     保育需要との関係では、全国に先駆けて2016年9月1日から第2子以降の保育料無償化を始めた兵庫県明石市は、2016年度中に認可園の新設や定員枠の拡大で約800人の定員拡大を行ったにもかかわらず待機児童数は571人に増えたと報道されました。無償化が実施されたら新たな需要の掘り起こしとなることは容易に予想できます。区長は、無償化によってどの程度保育需要が伸びるとお考えですか。それも見越して認可保育園の整備目標も引き上げるべきと考えますが、いかがでしょうか。
     次に、保育園における紙おむつの処分についてです。豊島区は、「保育の質を上げ、衛生面を向上させる」として、今年4月から1293万円の予算で認可保育園全園で紙おむつの処理を業者に委託する事業を始めました。武蔵野市は、来年4月から認可、認証保育園計67施設の主に0~2歳児約1500人分の使用済み紙おむつを、月曜から金曜まで週5回、市の予算で回収することを決め、回収業者への委託費は約1900万円とのことです。世田谷区では、2015年度からは区立保育園のゼロ歳児のおむつのみ回収し業者に処理を委託しており、一歳児以降は保護者が持ち帰っていましたが保護者からの嘆願を受けて前向きに検討中とのことです。
     多くの自治体は紙おむつを持ち帰る理由を、家庭で便を確認し健康状態を知ってもらうためと説明していましたが、豊島区も「わざわざ開いてチェックする人はまずいない」と言い、国立国際医療研究センター感染症対策専門職のコメントも「衛生管理の基本は汚物をすぐ捨てること。感染リスクを増やすので、持ち帰りは見直すべきだ」と指摘しています。紙おむつを園で処分することは、保護者のみならず保育士の負担軽減にもなるのでぜひ新宿区でも実施して欲しいという、現場の保育士の声も聞いています。
     新宿区の現状は、区立は持ち帰りが基本ですが、今年7月に区が行った調査では、私立認可保育園・公設民営園・私立認定子ども園47園中、持ち帰りは12園、園で処分が34園、うち費用を園が負担しているのが30園、保護者負担は4園と聞いています。民間が運営する保育園はほとんどが園で処分しているため、途中で転園したり、上の子と下の子を別々の保育園に預けている保護者からは区立保育園の対応に驚いたという声があるのは当然です。新宿区でも武蔵野市が予定しているような方法で、区立・私立、認可・認可外を問わず区の予算で回収を行ってはいかがでしょうか。少なくとも、区立での実施と、私立に対して財政的支援を行うべきではないでしょうか。答弁願います。

    (吉住区長) 次に、幼児教育・保育の無償化と待機児童解消及び保育園における紙おむつの処分についてのお尋ねです。
     はじめに、幼児教育・保育の無償化についてです。
     まず、消費税率の引上げに区はどのように考えているかについては、少子高齢化の急速な進展や国・地方ともに厳しい財政状況の下で、持続的な社会保障制度を構築し、その安定財源を確保する観点から、消費税率を引き上げることは必要であると考えています。
     次に、消費税増税がなされない場合の無償化についてです。
     幼児教育の無償化は、国が財源を確保し、責任を持って進めるべきものと考えます。
     次に、食材料費も含めた無償化と保育士の処遇改善等に関する国への要望についてです。
     食材料費については、その取扱いが支給認定区分により異なるという課題があり、現在、国において検討されているため、その動向を注視していきます。また、保育の質を確保するため、国に対し、処遇改善も含め、保育人材の安定確保に取り組むよう、今後も特別区長会を通じて要望してまいります。
     次に、幼児教育・保育の無償化による保育需要の伸びと保育所の整備目標についてのお尋ねです。
     区では、0から2歳児までの子どもたちの保育料について、住民税非課税世帯に対し、国に先駆けて無償化を実現しています。このため、0歳から2歳児では、無償化による大きな影響はないと考えています。また、所得に関わらず無償化の対象となる3歳児以上は、保育園、子ども園、幼稚園という選択肢があるため、保育需要がどの程度伸びるかを現段階で予測することは難しいと考えます。こうしたことから、今年度実施する、2020年度からの次世代育成支援計画と子ども・子育て支援事業計画の策定に向けた調査の中で、無償化に伴うニーズを的確に把握し、次期計画に反映させるとともに整備目標を定めてまいります。
     次に、保育園における紙おむつの処分についてのお尋ねです。
     保育園における紙おむつの処分については、保管場所の確保や回収方法、経費の規模など、実施する場合の課題について研究しているところです。
    保管場所の確保については、例えば区立園では、保管が可能な園もある一方で、棚などの物品の整理が必要な園や、一時保管場所からごみ集積所までの経路が狭く、運搬が困難な園があるなど、課題も見つかっています。今後は、費用負担のあり方や、未実施の私立園の状況などについて、引き続き研究を進めていきます。私立園に対する財政的支援については、現時点では検討していません。

     

    区議会活動 | 川村のりあき

    2018.10.16 更新

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